企業家精神とサステナブル・イノベーションを考える――大企業に求められる、ソーシャル・イノベーションのスケールアップ

今回は、JFBS第5回年次大会「企業家精神とサステナブル・イノベーション」(2015/910~11、CSR Asiaおよびフンボルト大学国際CSRカンファレンスとの共催)より、CSR Asia代表Richard Welford氏によるキーノートスピーチの内容をご紹介いたします。

ソーシャル・イノベーションについて議論されるようになってから早くも四半世紀が経っているが、持続可能な発展にはほど遠い。残念ながら企業にとって従来のアプローチは間違っていたと言わざるをえない。

コミュニティにおける小さくとも有効な解決策を見つけて、それを他地域にもグローバルに再現・展開していく「スケールアップ」ができてこなかったことが問題である。これまでとは異なる新しい革新的なアプローチが必要とされている。CSRを果たす方法を見直し、共有価値をうみだすソーシャル・イノベーションについて深く考えていく必要がある。

アジア太平洋地域では、貧困、環境劣化、水問題、雇用問題、人権問題、女性や子供の権利など、取り組むべき社会的ニーズが多く残されている。これらのニーズに応え、コミュニティとビジネスの両方に価値を付与するソーシャル・イノベーションだけが有効な方策になる。

そして持続可能な発展のためのイノベーションをスケールアップすることができるのは、世界中の人々とつながりをもつ大企業だけだと私は考えている。大企業のもつ資金規模は政府セクターと市民セクターのそれを合わせたものの約10倍にもなり、これはすなわち企業セクターがもつパワーを表している。このパワーの質を高めていく必要がある。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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