4月30日、菅直人元首相がフランクフルトで「脱原発勇敢賞」を受賞した。「2011年の東京電力福島第一原発事故の後、首相として、脱原発と再生可能エネルギーの推進を政治決断した」という理由からだ。挨拶をした菅元首相は、満場の客席から総立ちで鳴り止まぬ拍手に讃えられた。ドイツ人は、この賞を通じて日本人にどんなメッセージを伝えたかったのだろうか。(川崎陽子)
賞を企画したのは、長年にわたって「兵器とエネルギー、両方の核利用に反対する」と明確に表明してきたヘッセン州-ナッサウ・プロテスタント教会だ。
「日本人にとっては意外かもしれないが、ドイツには国家と教会の分離を規定し、かつ社会において両者の協力を推進する法体系があります」と、デトレフ・クノッヘ牧師。様々な市民グループとともに社会政策上の責任を引き受け、幅広く公共の議論に参加しながら築かれた協力関係の中から、「脱原発勇敢賞」も生まれた。
担当したヴォルフガング・ブッフ氏は菅氏の授賞の理由を「日本で分散型の代替エネルギー普及に尽力している多くの人々の代表として、首相の時に脱原発を決断したこと」と説明した。
「ドイツでは、東電の原発事故が政府の脱原発政策に直接影響した。一方、日本政府は過半数の国民の意思に反して、取り返しのつかない結果を招く原発の再稼動に賭けようとしている。それに対抗する菅氏を激励するという意味も込めた」という。
自らも「エネルギー大転換」に熱心に取り組んでいるフランクフルト市のペーター・フェルドマン市長は、要人の歓迎に使う旧市庁舎の「皇帝の間」を受賞式に提供した。招待状を受け取った人しか入れないが、約300人が壁際のベンチまで埋め尽くした。
菅氏に賞金1万ユーロ(約125万円)を贈ったシェーナウ電力会社(EWS)は、チェルノブイリ原発事故をきっかけに、小さな町の住民たちが大手電力会社と対抗すべく設立した。
原発や化石燃料による電力は供給しない。役員のゼバスチアン・スラーデク氏は、「菅氏に連帯の支援をしたい。EWSは、世界が共通の目的に向って進むことを目指している」と語った。
2002年に脱原発法を施行した政権で環境・原子炉安全相を務めたユーゲン・トリッティン議員からも祝辞があった。
「私たちはグローバルな『原子力ムラ』に見切りをつけねばならない。この賞は、政治権力を失う代償という勇気をもって日本の『原子力ムラ』に挑んだ闘士に対する私たちからの敬意のしるしです」。
菅氏は「人間の英知で核兵器と原発という二つの核を廃絶できるかどうかが今こそ問われています」と御礼の挨拶で述べ、原発ゼロの実現に全力を挙げると約束した。