アフリカ 54 カ国や日本は8月末、第6回アフリカ開発会議(TICA DⅥ)をケニアで開催し、「ナイロビ宣言」を採択した。安倍晋三首相は、「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ」(IFNA)を発足させ、官民連携 で栄養問題に取り組むことを表明した。アフリカの栄養問題が深刻化す るなかで、味の素グループは事業で培った技術力を生かし栄養改善プロ ジェクトを強化している。(オルタナ副編集長・吉田 広子)
「アフリカが質の高い成長を続けるためには、民間の力が必要だ。日本企業の高い技術力は、アフリカの開発課題を解決することに資すると確信している」
TICAD Ⅵの全体会合で、安倍首相はこう述べた。ナイロビ宣言では、官民を挙げて、3つの優先課題「経済の多角化」「医療・保健体制の強化」「テロへの対策」に取り組む。安倍首相は「栄養は、保健の基礎。NEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ)と共に栄養改善の施策を進めていく」と強調した。
■社会と経済価値の向上へ
「世界子供白書2016」(ユニセフ)によると、世界で1億5900万人の5歳未満児が栄養不良による発育阻害に陥っているという。味の素グループは1999年に「食・栄養」分野の国際協力支援活動「AINプログラム」を開始し、2009年から「ガーナ栄養改善プロジェクト」に取り組むなど、栄養問題の改善に注力してきた。
「世界の栄養課題に対して、事業を通じて貢献していく。社会価値を創出するとともに、経済価値を向上させ、グループの成長を果たしたい」
味の素(株)の西井孝明社長は、8月に開かれたメディア懇談会で力を込めた。
同社の事業は1908年、池田菊苗博士が発見した「うま味」を、二代鈴木三郎助が「味の素」として製品化したことから始まった。「うま味を通じて粗食をおいしくし、国民の栄養を改善したい」という創業の志は、現在はASV(味の素グループならではの価値創出の取り組み)として国内外の事業活動に生きている。
「ASVをさらに進化させながら、地域社会と連携した事業活動によって各国地域固有の栄養課題を解決していく」(西井社長)