しかしムクウェゲ医師は、「国際的な法律の成立で前進は見られるが、ドッド・フランク法の紛争鉱物の調達規制は厳格とは言えず、さらに企業のロビー活動で脆弱化する傾向にある」と指摘する。
紛争鉱物に指定されているスズやタンタル、タングステン、金以外にも目を光らせなければならない資源問題がある。コンゴは世界最大のコバルトの産出地だ。国際NGOのアムネスティ・インターナショナル(ロンドン)は2016年1月のレポートで、アップルやサムスンなどの製品に使われているコバルトが児童労働や過酷な労働条件のもとで採掘されていると指摘している。
日本の消費者に求められる姿勢
規制だけでこうした問題を根本的に解決するのは難しい。企業のあり方を変えるのは、需要を生みだす消費者の姿勢だ。
2012年に消費者教育推進法が成立したことで、現在、日本の高校の教科書や授業では、コンゴの紛争鉱物問題やカカオの生産地問題などが取り上げられている。
コンゴの紛争資源問題について研究している東京大学公共政策大学院の華井和代助教によると、「問題を知った高校生の反応は良く、募金活動を始めた学生もいた」という。さらに若手教員も個人の社会的責任について関心が高いと話した。ミレニアル世代の新たな価値観が日本のこれからの消費者の姿勢を変え、資源紛争を解決していく可能性がある。
日本でのコンゴ紛争の報道は近隣諸国ではないことや長期性、残酷すぎる暴力性から少ない。しかし華井助教は紛争資源問題を「つながり」という視点でとらえることで、消費者としての責任を考えて欲しいと話す。ここでいう「つながり」とは、商品を通しての問題とのつながり、消費行動を変えることでの問題解決とのつながり、そして同じ人間に起きている問題という形而上的なつながりだ。