「社会的課題とマーケティング」を考える――「企業と社会フォーラム」第6回年次大会

企業と社会フォーラム(JFBS)は2016年9月8~9日の2日間にわたり、JFBS第6回年次大会を早稲田大学で開催します(後援:日本マーケティング学会)。本大会は「社会的課題とマーケティング」を統一テーマとしています。

■社会変革をめざすマーケティング

近年、地域社会あるいは国際社会において、これまでのような政府や企業における取り組みだけでは対応しきれない様々な社会的課題が山積しています。とくに日本では、少子高齢化や所得格差、都市部における人口集中や待機児童問題、地方における人口減少・過疎化問題や地域活性化など、多くの課題に直面しています。国内外における社会的課題の解決に向けてソーシャル・ビジネスが起業され、既存の企業もその解決に貢献し新しい価値を生み出す社会的事業を企業戦略として意識するようになってきています。

このように社会的課題の解決を目指す社会的企業やCSRの観点から、大企業・中小企業はこの領域の重要さについて理解をし始めています。しかし、実務面においても、研究面においても、社会的課題の解決につながるビジネスやソーシャル・プロダクトの開発、それを進んで購入しようとする消費者の意識・行動の理解、いわゆるグリーン・マーケットとも言われる新しい市場をどのように創り出していくかといった議論は、まだ十分であるとは言えません。

ソーシャル・マーケティングとは、社会的課題の解決に向けて、マーケティングの手法を活用し、社会的成果と経済的成果をあげることを目指すものと理解できます。ソーシャル・マーケティングに関する研究は、企業やNPO/NGO、政府組織など多様な組織において展開可能な点が先行研究で示されています。ソーシャル・マーケティングの考え方を取り入れて社会的課題の解決を図っている組織は日本ではまだ限られていますが、積極的な取り組みもみられます。

本大会では、組織・製品やサービス・消費者との関係での社会的課題の解決について、「ソーシャル・マーケティング」、「コーズ・リレイティッド・マーケティング」、「NPO/NGOのマーケティング」、「政府機関のマーケティング」、「ソーシャル・プロダクト」、「地域ブランド」、「ソーシャル/グリーン/エシカル・コンシューマー」、「サステナブル・マネジメント」といったテーマを含め企業と社会にかかわるテーマを多面的に議論してまいります。多くの参加者の皆様によって、新しい議論が提起されることを期待しています。

■ソーシャル・マーケティングの権威も登壇
キーノートスピーカーには、ソーシャル・マーケティングの権威Dirk Mattenヨーク大学教授、およびユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング代表取締役プレジデント&CEO Fulvio Guarneri氏を迎え、講演していただきます。

続いて行われるテーマ別企画セッションでは、次のような内容について報告がなされるとともに、研究者・実務家がともに議論します。

•都市開発とイノベーティブ・マーケティング:少子高齢化が進む日本社会の未来を見据え、高齢者や子育て層など様々な世代の人々への配慮を組み込んだまちづくりを進めている企業の事例に基づき、新しい価値を生み出す都市開発とそのマーケティングについて議論します(積水ハウス、三菱地所等の企業からの事例報告を予定)。

•持続可能性とイノベーティブ・マーケティング:地球環境への負荷を減らすと同時に、ユーザーへの配慮も組み込んだ製品・サービスを提供している企業による事例報告に基づき、持続可能性を達成するためのイノベーションとマーケティング手法について議論します(花王、LIXIL等の企業からの事例報告を予定)。

•社会的課題とイノベーティブ・マーケティング:既存のサービスに社会的課題の解決に資する取り組みを埋め込み、ユニークなマーケティングを実施している企業の事例に基づき、社会的課題を解決するイノベーティブなサービスについて議論します(SGホールディングス、イオン、JTBコーポレートセールス等の企業からの事例報告を予定)。

•地方創生とイノベーティブ・マーケティング:東日本大震災からの復興を目指すソーシャル・ビジネスの事例報告に基づき、地方創生の取り組みにマーケティングの手法を活用していくことについて議論します(NPOあすびと福島、小高ワーカーズベース等の団体・企業からの事例報告を予定)。

本学会では、国内外からの参加者のみなさまが学界、産業界、行政、NPO/NGOなどのセクターを越えてネットワークを拡充していけるよう、交流の場も大切にしています。

1日目の9月8日には、立食形式の交流会、2日目大会終了時にはフェアウエルドリンクという形で交流機会を用意するほか、2日間の会期中コーヒーブレイクを随所に設けています。

隔年で国際ジョイント・カンファレンスも開催していることから、海外研究者・実務家の参加・報告も年々増えており、国内外の最新の議論動向に関する情報収集や関係者間のネットワーク構築の場としてご活用いただけます。

7月31日までは参加申込の早割期間となっております。詳細は、http://j-fbs.jp/annualconf_2016.htmlを参照下さい。ご関心をお持ちの皆様の参加をお待ちしております。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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