10年以上預金の出し入れがなく預金者も名乗り出ない「休眠預金」を民間公益活動に活用するための休眠預金活用法案が、今臨時国会で成立する見通しになった。国会議事堂近くの衆議院議員会館には21日、NPOら社会課題に取り組む関係者が集まり、超党派の議員に市民の声を届けた。(辻 陽一郎)
「9合目まで来た」。休眠口座国民会議メンバーとして法案成立に向け取り組んできた駒崎弘樹氏は会場で安堵の表情を見せた。「成立すれば、世界最大の休眠預金を活用した社会的ファンドが実現する。多くの困っている子どもたち、ハンディキャップを持つ子どもたちを助けられる。歴史が動く瞬間となるだろう」。
同法案は、毎年1000億円ほど発生しているという休眠預金を、NPOに限らず民間公益活動に取り組む団体に助成などを行なうことが目的だ。しかし法案そのものに対して市民の間で基本的な理解が進んでいないという課題もある。
公明党の谷合正明議員は「預金がとられるのではないかという声もあるが、預金はいつでも利息も含めて返還される」と強調した。預金者の権利が無くなることはなく、10年以上放置した預金でも、時効なしで払い戻しが受けられる。
成立後の運用に対しての議論もある。日本NPOセンター早瀬昇代表理事は「一般的に寄付は相手先を選ぶことができるが、この法案は預金者が寄付先を選ぶ仕組みではない。そのため透明性が重要になる」と警鐘を鳴らす。
民進党の岸本周平議員は「法案が通った後こそが重要。今後、ガバナンスをどうするのか、利益相反の関係を生まないかなど議論が必要」と述べた。
中高生の教育支援を行う3keysの森山誉恵代表理事は「社会保障費のうち、子どもに活用される費用は少ない。まだまだ子どもへの支援は足りていない。高齢化が進むなか、子どもに活用できる枠組みが増えることはありがたい」と法案成立への期待を語った。