東京電力のグループ企業、関電工が前橋市で進める木質バイオマス発電計画に対して、周辺住民の反発が強まっている。群馬県内の未利用間伐材などを燃料とする計画だが、住民は「福島原発事故で汚染された木材を燃やすと、放射性物質が環境中に拡散しかねない」と批判。7月には知事を相手取り訴訟も起こした。関電工側の住民説明は不十分で、企業姿勢として誠実でないことも問題をこじらせたようだ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■県が補助金4億8千万円を支出
「前橋バイオマス発電所」は関電工、および製材大手のトーセン(栃木県矢板市)が出資。赤城山麓にある電力中央研究所の試験施設から用地を取得し、2017年6月の操業開始をめざす。発電出力は6750キロワットで、木質バイオマス発電としては規模が大きい。燃料には、県内を中心に生じる間伐材ほか未利用木材を年間約8万トン使用する計画だ。
これに対して、周辺住民らでつくる「赤城山の自然と環境を守る会」が反対。発電で生じる排ガス、および燃焼前に木質チップを圧搾して出た廃水などにより、原発事故由来の放射性物質が拡散する恐れがある、としている。
住民らは7月、計画に4億8千万円の補助を行う決定をした群馬県を相手取り、支払いの差し止めを求める訴訟を起こした。「森林内に隔離されている放射性物質が、事業が実施されれば人家近くに大量に持ち込まれる」。(木材チップの燃焼で)「放射能汚染の拡散と高レベルの放射能物質発生を招くという脅威に群馬県民が広く晒される」。訴えの中で住民側はこう主張している。
同会の羽鳥昌行事務局長は「事業を行うのであれば環境影響評価が必要」と訴える。滝窪町自治会長の井上博さんも「子どもたちには100年先もここの自然環境を残していきたい。それなのに、住民が知らない間に環境を汚されるとすればたまらない」と話した。
環境影響評価について県は、計画の排ガス量が基準値を下回るとして実施の必要性を認めていない。また、事業で生じる排出に含まれる有害物質について、関電工は取材に「県や市が指定する基準値を下回るよう対策を講じる」と答えた。