友人であり、エムズシステムのスピーカーのご愛用者でもあるサウンド・エンジニアのやすさんが「ヨルダンに行ってきたのでご報告に」と言って新富町のショールームにやって来ました。
彼は録音エンジニアとして活躍する傍ら、エムズシステムのスピーカーを使って増上寺の大広間などで録音スタジオの現場を再現するようなイベントも開催しています。
その彼がヨルダンに!その目的は。
「妻が主宰する『みんなで作るシリア展』に同行し、ヨルダンのシリア難民の方々のもとに渡航してまいりました。目的は心身を豊かにする音を届け、少しでも平和な時をつくるために」
彼のリポートを原文のままご紹介します。
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最初にヨルダンに到着し驚いたのは、とても平和なこと。難民の方々も少々見かけますが、隣国での紛争は全く想像できません。
それどころかアラブに暮らす人々の親切さや気さくさを通して、今で味わったことのない人間の温もりを感じ、最初は驚き戸惑いつつも、そのうち日本同様に安心して行動できました。
見ず知らずの人同士がこんなに温かくなれるなんて、アラブの方々に接して初めて受けた感覚でした。
イスラムの教えにもあるように、アラブの人たちは旅人をもてなすという素晴らしい習慣が身に付いているので、確かにあの髭の濃い、「濃い」顔が近づいてくると思わず身構えてしまいそうなりますが、とても人懐っこく、親切で、礼儀正しき人々です。
こちらの難民施設ではミュージック・セラピーと題した音楽鑑賞会を開催させていただきました。車椅子の方々が集まりワイワイガヤガヤする中、日本から持ち込んだ小さな波動スピーカーを響かせました。
はじめはシリアの人ならば誰もが知っている伝統音楽。安心感のある音で皆に笑顔がこぼれます。
それから日本の清流の音に合わせてドビュッシーの「月の光」。美しい音波が流れるとざわついていた方々も徐々に静かになり、いつの間にか会場全体が、小さなスピーカーから出る生きた音に包み込まれます。
そして音が消えると拍手が鳴りました。言語を超えて音の波動で気持ちが通じた瞬間、「人間っていいなぁ~!」と呟いてしました。
皆さんはとても満足したゆったりした表情をされていて、この会がきっかけで翌日からはリハビリの時間に音楽をかけることになりました。心を込めて奏でた音には心に触れるエネルギーがあり、それを丁寧に伝えることで共鳴したり、優しくなったり、元気になったりするのでしょう。
短い時でしたが難民の皆さんに真心を伝えることができ、そして喜んでいただくことができ、「ホッ」としました。
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ヨルダンから帰ったきた彼に連絡を取ると、「いま石巻です。ヨルダンのときと同じようにスピーカーを持ちこんで聞いてもらっています」。
素晴らしい活動を継続されているやすさんに心からの敬意を表するとともに、このような地道な活動から、音の持つ力、人を癒してくれる波長が世の中に広がって行くように心から願っています。