27日から神戸で始まった「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」で、薬の特許を過度に保護する条項案が焦点の一つとなっているが、国境なき医師団(MSF)はこれを撤回するよう訴えている。RCEPの文書には、通常20年の特許期間を延長する案が盛り込まれているという。製薬会社の独占を促し、ジェネリック医薬品の参入を阻む内容だ。(辻 陽一郎)
RCEP交渉の会合には、ASEANとインドなどが参加する。「途上国の薬局」と呼ばれるインドが合意すれば、途上国でHIVやマラリアの薬が入手困難になる事態が予想され、MSFは危機感を強めている。
MSF日本のジェレミィ・ボダン事務局長は「RCEP条項案の1つは、特許独占を長引かせ、法外な薬価をさらに長期化させることになります。脆弱な保健システムを揺るがせ、公衆衛生に関わる新たな課題への取り組みに欠かせない、患者重視の研究開発を抑止してしまうでしょう」と指摘する。