FoE Japanなど環境NGO7団体が4月20日、新国立競技場の建設現場で、違法木材が使われているとして、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対し、緊急に調査するよう要請した。問題になっているのは、違法伐採が横行するマレーシア・サラワク州産のシンヤン社製熱帯合板で、コンクリート型枠として使われている。(オルタナ編集部=吉田広子)
国内外の環境NGO7団体は「新国立競技場の建設現場で、サラワクの熱帯林の破壊および人権侵害につながる疑いのある熱帯合板が使われている」と報告している。独自の調査で明らかにした。
マレーシア・サラワクは、違法伐採が横行し、森林破壊が世界で最も深刻な場所の一つだ。日本はサラワク州の木材・木材製品の主要な輸入国である。
サラワクの大手伐採業者シンヤン社は、「ハート・オブ・ボルネオ」と呼ばれる貴重な原生林を組織的に伐採している。国際NGOグローバル・ウィットネスによると、2016 年には1日当たりサッカーコート40 個分以上に当たる面積の雨林を皆伐したことが明らかになった。
こうした森林伐採は、森で生きる先住民の土地や生活、仕事を奪い、深刻な人権侵害を引き起こしている。
■五輪の調達基準は持続「不」可能
大会組織委員会は、東京2020大会を持続可能な大会にするため、「持続可能性に配慮した運営計画」を策定し、活動を推進していくとしている。2016年6月には、「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を策定した。
だが、オーストラリアのNGOマーケット・フォー・チェンジのペグ・パット氏は「シンヤン社はサラワクの熱帯林で最も悪名高い開発企業の一つであり、この企業からの合板はいかなる持続可能性基準も満たしてはいない。シンヤン社の合板を使用することは、持続可能なオリンピックを開催するという日本のコミットメントに対して明らかな違反である」と批判する。
FoE Japan森林担当の三柴淳一氏も「大会組織委員会が環境面の持続可能性および人権に関する基準から、コンクリート合板型枠を免除するという抜け穴を認めていることも問題だ。そもそも組織委員会が策定した調達基準はゆるく、このままでは違法性の高い木材が合法な木材として日本に輸入されてしまう」と指摘する。
三柴氏は「国立競技場は日本政府が建設する建造物であり、国の威信を示す場所でなければならない。このままでは、持続可能な大会とはいえない」と批判した。