2017年3月15日、僕は文部科学省の講堂にいた。
当社の社会貢献活動が、文部科学省が注力する「青少年の体験教育活動の推進」に最も寄与するとして、文部科学大臣賞を受賞したためだ。
受賞した正式名称は、「文部科学省 青少年の体験活動推進企業表彰 文部科学大臣賞」である。2011年に受賞した経済産業省の「おもてなし経営企業選」以来の国からの大きな表彰であった。
なだたる大企業が多数エントリーされる中での受賞に、社員一同驚きを隠せなかった。そのお祝いにと、表彰式の当日は経営している店舗を休みにして、社員総出で文科省に向かう事にした。
では、何をもって受賞をしたかと言うと、日本初と言われている、「小学校の紅茶部のサポート事業」である。栃木県で、しかも小学校で、である。
当社が開業した2006年当時、皆さんご想像の通り、栃木、宇都宮=紅茶というイメージは皆無で、消費量も全国最下位クラスであった。そんな逆境の中、紅茶を通じて人と地域を元気にすべく、衰退した地元宇都宮市中心部の商店街でY’s tea(ワイズティー) をオープンした。
すると、野球で言う犠牲バントをするため、つまり社会貢献ありきの起業で、更には売るのが難しい商材を売れない地域の更に厳しい場所にて扱うという事に、人と社会が、はたまたもしかしたら神様までが応援をして頂き、何と2010年には紅茶の消費量が全国一位となる奇跡がおきた。
その時、予てより講演や、出前講座、職業体験等でお手伝いをしている近隣の宇都宮市立中央小学校の校長から、一本の電話があった。
「根本社長!紅茶の消費量日本一おめでとうございます!僕たちも子どもたちも誇りに思います。さらに、『宇都宮に生まれて、初めて嬉しく思いました』『地元が好きになりました!』という児童からのお手紙まであったのですよ!」
そこで少し間をおいて、彼から一言、「この学校に紅茶クラブをつくって欲しいのです!」。
「紅茶クラブ」――、なるほど。放課後の1つのクラブとして、子どもたちが紅茶を通じた学びの場を提供するというのは、お互いにとって持続可能な取り組みになりうる。その場で校長に以下のポイントをあげさせていただいた。
1.小学校1年生から参加できる仕組みづくり
2.安全管理が行き届く仕組みづくり
3.誰もが参加できる仕組みづくり
一見、1と3は同じ内容に思えるが、1は幼稚園卒園をしたばかりの子どもたちが参加できる環境づくりで、3は金銭的負担を考えての事だった。
湯沸かしポット、ティーポット、茶こし、ティースプーン――。本格的な紅茶を淹れる際にはある程度の備品が必要で、高額ではないが、各自が購入するとなると、クラブに入会したくても入部できない子どもが出てくると考えたからだ。
「先生!紅茶部として発足させ、市から部活動に関する補助を頂けるようにしたらどうしょう?」
これが僕の答えだった。
■紅茶部の始まり