社会起業家支援を行うNPO法人ETIC.(東京・渋谷)はこのほど、アメリカン・エキスプレス・インターナショナルの協力のもと、次の100 年に向けたアクションやコレクティブ・インパクト(集合的インパクト)について考えるセミナー「Social Entrepreneur Gathering Collective Action for the Next 100 years」を都内で開催した。100人を超える社会起業家が集まり、どのように社会課題を解決し、効果を高めていくかなどについて議論した。(オルタナ副編集長=吉田広子)
「Social Entrepreneur Gathering Collective Action for the Next 100 years」は、アメリカン・エキスプレス日本100周年を記念して開かれた。アメリカン・エキスプレスは世界各国でNPO/NGO、社会起業家などの支援を行っているが、日本でも2009年からETIC.と協働し、社会起業家の育成に力を入れている。
アメリカン・エキスプレスは1983年の3カ月間、社会貢献型のマーケティング・プログラム「自由の女神修復プロジェクト」を実施した。カードの発行1枚あたりや、カードの利用1回ごとにアメリカン・エキスプレスが寄付を行い、自由の女神修復基金として170万ドル(約1億9000万円)を拠出した。
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本の清原正治社長は、「次の100年にどう挑んでいくか。100年前を振り返ると、第一次世界大戦のさなかだった。社会に貢献していこうという原点は、大企業、私企業も同じ。これからは個人が直接、社会に貢献する時代になっていく。そのためには、点から線、線から面にするネットワークが必要。社会に対するインパクトを高め、社会起業家の活動を特別なものではなく、ありふれたものにしていってほしい」と激励した。
セミナーのテーマである「コレクティブ・インパクト」とは、複雑化する様々な社会課題を解決するために、行政や企業、NPO、教育機関といった多様なセクターの協働を効果的に進める手法だ。ハーバード大学経営大学院のマイケル・ポーター教授が設立した米コンサルティングファームFSG社が2011年に提唱した。
ETIC.の宮城治男代表理事は「それぞれが向き合っている領域だけではなく、組織やセクターを超えてつながりながら、目標を掲げて課題を解決し、価値を創造していくということを追及していきたい。この場が新しい視点やつながりを持つ機会になれば」と話した。
■社会起業家の6割が人材不足
イベント開催に先駆けてETIC.が実施した「社会的企業が抱える組織の課題」に関するアンケート調査によると、約6割が人材不足、約5割が資金不足の課題を持つという。その他の課題としては「適正な行政連携ができていない」「マーケティング」「新規事業をつくりだせていない」などが挙げられた。
ETIC.は、「社会課題解決の担い手が増えていくことは大切だが、より大きなインパクトを効果的・効率的に出していくために、横の連携を進めていくことが重要だ。そうした問題意識に対応して生まれた概念が『コレクティブ・インパクト』。社会的企業、行政、民間企業、大学などの様々なプレイヤーが、バラバラに活動するのではなく、共通のゴールに向かって適切な連携・役割分担を進めていくことが、今後の日本を考えると重要だ」としている。