東大や九大の教授らで組織する「原子力政策円卓会議2010」は9月16日、商業原子力発電の段階的縮小も視野に入れた、原子力政策の大幅見直しが必要だとする提言書を公表した。核燃料サイクルについても問題点を指摘した。内閣府原子力委員会が進めている、原子力政策大綱の議論にも影響を与えそうだ。
■「政府主導の原子力政策に限界も」
原子力政策大綱は、政府による原子力の基本政策で、2005年10月に原子力委員会が策定した。それから5年たち、同委員会は見直しの有無も含めて、9月21日まで国民から意見を募集している。
一方、円卓会議は今年5月から非公開で議論を重ね、1)商業原発の段階的縮小を含む複数の政策選択肢の検討を 2)核燃料サイクルについての議論が不十分 3)原子力委員会の頭越しに政策決定が行われている 4)原子力事業自体が停滞している中での政策見直しが必要――などの提言をまとめた。
■「原子力規制庁」を提唱も
円卓会議が特に問題視したのは、長年にわたる政府・官僚主導によって、原子力行政そのものが硬直化していることだ。原子力行政の頂点にいるはずの原子力委員会を差しおいて、経済産業省の総合資源エネルギー調査会が独自に編んだ原子力立国計画が「高速増殖炉実証炉の2025年までの建設」をうたうなど、政策大綱の内容を大きく踏み越えている。
また、安全規制をつかさどる原子力安全・保安院が、原発を推進する経産省の傘下にあるという構造的な問題もある。提言書では、政治主導のガバナンス確立と行政組織の抜本的な見直し、政策論議の実質化など、9つの処方箋を提示している。
円卓会議の世話人を務める吉岡斉・九州大学副学長は16日の会見で「原子力規制庁のような独立した行政組織が必要だ」と指摘した。同じ世話人である東京工業大学の澤田哲生助教も「政府主導の原子力行政のままではうまく行かない」と、開かれた原子力行政の必要性をにじませる。
円卓会議は今後、政策大綱の改定作業と並走して意見表明をしていく構えだ。今後の原子力行政が、官僚による独占的な意思決定から、国民の意志を反映した「オープン型」に転換できるかが問われている。(オルタナ編集部=斉藤円華)2010年9月16日