「貴社のCSRの取り組みによって、どう価値創造されるのでしょうか。もし価値創造が無い場合は、当社はそれを単なるコストと見なします」――。最近、ある上場企業のCSR担当者が機関投資家やアナリストからこう言われて、頭を抱えたという。(オルタナ編集長 森 摂)
急拡大するESG投資の現場で誤解と混乱
2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名したことをきっかけに、日本でもESG(環境・社会・ガバナンス)投資へのシフトが急だ。
それまで財務情報(売上高、利益、投資収益率など)を元にしていた機関投資家や証券アナリストの投資判断基準に、非財務情報が加わった。それがESG投資だ。欧州では株式市場の価値形成要因のうち6割以上が非財務情報というデータもある。
ESG投資では、企業の環境活動、CSR活動、ガバナンス体制を評価し、それを元に株式購入やファンドへの組み込みを行う。
それ自体は歓迎すべきことだが、日本では、ESGという新しい投資基準が投資家やアナリストが急速に浸透し始めたことで、現場ではさまざまな誤解や混乱が広がっているようだ。