フランスでも食品や食材の偽装表示が後を絶たず、国際NGO「フードウォッチ」フランス支部がパリ郊外で啓発活動を行っている。年末のパーティシーズンにはフランス人が好むビュッシュ・ド・ノエル(薪型ケーキ)、オマールエビのポタージュなどに産地や原料などの偽装表示が多いという。フードウォッチのメンバーはパリ郊外の高級スーパーの前などで、行きかう人々に偽装表示の商品を説明し、買い物の際に注意するよう呼びかけている。(パリ=羽生のり子)
フードウォッチが買い物客に配ったのは「偽装表示セレクション」と題したパンフレットだ。スーパーの広告パンフレットそっくりだが、問題となる表示を拡大して商品写真と一緒に掲載している。
例えば、「アルザスのソーセージ・クナック オーガニック」の原料は「EU(欧州連合)および非EU産」と表示されており、原料はアルザス産ではない。
「フランスで有名なコラヤ社の『オマールエビ味のカニカマ(フランスではスリミ)』には、本物のオマールどころか、オマールの香料すら入っていない。だが、キロ当たりの値段は同社の他の製品の2倍」と、フードワッチのイングリット・クラグル広報部長は言う。
国際的に有名なブランドも問題視されている。クノールの「オマールエビと伊勢エビのポタージュ」には、全体の1.2%しか伊勢エビが入っていない。冷凍食品のピカールが出している「コーヒーとヘーゼルナッツの薪型ケーキ」のヘーゼルナッツの割合は全体の2.2%のみ。スーパーで売っているスターバックスの「ホワイトチョコレートモカ」には、名前とは裏腹にホワイトチョコレートが入っていないという。
フードウォッチのメンバーのグザビエ・ラフィットさんは「興味のない人はまったくチラシを取らないが、たくさんの人に関心を持ってもらえた」と、キャンペーンの成果を話した。
■パッケージから偽装表示を明らかに
フードウォッチは、商品名や包装に出ている宣伝文句と原材料表示が一致しているかを調べることで、次々に偽装表示を明らかにしてきた。一般の消費者も、原料表示をよく読めば、包装に大きく印刷された商品名と実際の中身の違いが分かる。フランスでは重量が重い順に原材料名を記載し、品名や包装に出ている宣伝文句に含まれる原材料は全体のうちの何割を占めているかまで表示する義務があるからだ。キャンペーンの狙いは、宣伝に騙されない賢い消費者を増やすことにある。
フードウォッチは2002年にドイツで設立され、2013年にフランス支部ができた。カリン・ジャクマール仏支部事務局長は、卒業生の年収の高さで2016年にヨーロッパのビジネススクール30校中9位にランクされたESLSCAビジネススクールの卒業生。マーケティングが専門だっただけに、その悪用を見破ることができるのが強みだ。