3月16日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(東京2020組織委員会)は紙とパーム油に関する調達基準案を作成しました。「持続可能性に配慮した紙の調達基準(案)」と「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準(案)」が公表され、一般からの意見募集を3月30日まで行っています。(川上 豊幸=レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表)
しかし、環境NGOの視点では大きな懸念があります。
まず、紙とパーム油の調達基準案の題名には大きな違いがあります。紙の基準案は「持続可能性に配慮した紙の調達基準」となっていますが、パーム油の方は「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」となっています。つまり、「持続可能性を満たしている基準ではない」ことをすでに認めた形になっているのです。
こうした表現になった理由は、マレーシアやインドネシアが国として進めている認証制度である「マレーシア・サステイナブル・パーム・オイル」(MSPO)や「インドネシア・サステイナブル・パーム・オイル」(ISPO)が東京2020組織委員会の基準に合致できていないにも関わらず、「活用できる」としてしまったことです。
例えば、MSPOやISPOには強制労働や移住労働者の権利といった項目がなく、同委員会の「持続可能な調達ワーキンググループ」では「持続可能性に配慮した基準を満たしているとは言えない」と議論になっていました。
しかし活用できる認証制度として列挙したことで、「持続可能性に配慮した調達基準」という名称では誤ったメッセージを送ってしまうとの懸念から、こうした修正が加えられたのです。
さて、ここからは、調達基準の4点について見ていきましょう。
パーム油については、以下の4つの基準があります(調達基準案 項目2より)。
①生産された国、または地域における農園の開発・管理に関する法令等に照らして手続きが適切になされていること。
②農園の開発・管理において、生態系が保全され、また、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されていること。
③農園の開発・管理において、先住民族等の土地に関する権利が尊重されていること。
④農園の開発・管理や搾油工場の運営において、児童労働や強制労働がなく、農園労働者の適切な労働環境が確保されていること。
■基準に含まれなかった「森林減少阻止」