まず基準②では「生態系が保全され、また、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されていること」とあります。
基準案「別紙(調達基準4に関する確認方法)」(4ページ目に添付)には「泥炭地や貴重な天然林など保護が必要な重要な森林等がある地域についてはその保全のための措置が講じられていることを確認する」とありますが、保護が必要な「重要な」森林のみを対象としていて、一度伐採が入っているような二次林を含む一般の天然林は対象となっていません。
ちなみに、同基準で活用可能とされる「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)、MSPO、 ISPOの認証制度においては、二次林を含む一般の天然林の保全規定はありません。さらに、MSPOやISPOでは合法性を超えるような環境保全の規定は見当たりません。
「森林減少阻止」には、「貴重な天然林など保護が必要な重要な森林」だけでなく、野生動物にとって重要な生息地である一般の天然林も含める必要があります。すでに多くの森林に伐採が入っており、熱帯林の保全という観点から非常に重要です。
「持続可能な開発目標(SDGs)」でも2020年達成が掲げられている目標なので、基準に組込んでもらいたかった点でした。広く意見を募っているパブリック・コメントにおいても、多くの人に基準の強化を求めてほしい点です。
■「地域住民」の土地権も
基準③については、紙の基準案では「先住民族」だけでなく「地域住民」も明記されています。しかしパーム油の基準案ではなぜか書かれていません。「先住民族等」の「等」に地域住民は含まれているのかもしれませんが、明確ではないので、ここは、先住民族のみならず地域住民の権利尊重も明記してほしいところです。
なお、RSPOやMSPOでは、地域住民からの「事前の情報提供に基づく、自由意思による合意形成」が認証基準に含まれていますが、ISPOにはありません。
■基準自体が満たせていない認証も「活用」?
基準④で「児童労働や強制労働がなく」と明記していますが、MSPOとISPOには「強制労働」を禁止する規定がありません。また、前述の「別紙(調達基準4に関する確認方法)」では「移住労働者を含め、適切な雇用手続きや最低賃金その他労働条件が確保」とあり、調達全体に関わる「持続可能性に配慮した調達コード」でも「移住労働者」の人権尊重が述べられていますが、移住労働者に配慮した規定はMSPOやISPOにはありません。
油脂業界の方によれば、MSPOは強制労働については法律で対処していると説明し、「強制労働が行われているといった証拠ははない」と述べているそうです。しかしマレーシアでのパーム油業界の強制労働問題は、大手メディアの調査報道や米国労働省も認めている課題です。
法規制があるのならば、そうした規制の実施にも大きな課題があり、それこそ認証制度による確認が必要な部分と言えるのではないでしょうか。またRSPO認証農園においても、様々な違法労働の慣行や労働環境の問題も報告されており、基準があったとしても、適切な監査が行われていない点も考慮しておく必要があります。
■非認証油も混入