ダノンジャパンは約2年前から、「より自然で健康的な製品を選びたい」という消費者ニーズを受けて、着色料、人工甘味料、人工香料を使わないヨーグルトの開発を進めてきた。2017年9月に先行してリニューアルし、出荷された「ダノンビオ(厳選セレクション)」は、売り上げが約20%増えたという。今年5月中旬には、全国の店頭に並ぶすべてのヨーグルト製品で3つの添加物が不使用になる。(オルタナ副編集長=吉田広子)
消費者の本当のニーズとは何か。約2年前の消費者調査で分かったことは「おいしさ」「自然や健康へのこだわり」「原材料の透明性」だった。
「ヨーグルトの工業化に成功したことで、だれでもどこでも栄養価の高いヨーグルトを食べられるようになった。一方で、消費者は逆の方向を求めている。本当は何が入っているのか、どこから原料が来ているのか、消費者は納得感を求めている。当社にとっての課題だった」
ダノンジャパンの松田実副社長は、こう説明する。同社は約2年間かけて、すべてのサプライヤーを確認し、原材料を厳選。着色料、人工甘味料、人工香料を使わなくて済むレシピに変更した。「当然、コストは上がる。だが、本当の消費者ニーズに応えたかった」(松田副社長)。
こうしてダノンジャパンは、「素材に徹底的にこだわる」「原材料に関する情報を開示する」「引き続き、栄養ニーズに応える」の3つを徹底することを決めた。4月12日からは全製品に使用している原材料の原産国をウェブサイトで公開している。
ダノンジャパンのルイス・ファリア・エ・マイア社長は「企業の責任は商品を出荷した時点で終わるのではない。企業として持続的な利潤を追求する必要があるが、環境や社会への影響を考えなければならない。消費者も何を口に入れるのか、知る責任がある」と話す。
■「チームホネスト」が原材料を見直し
原材料の見直しや原産国の情報公開を進めたのが、マーケティング部、研究開発部、購買部の社員5人から成る「チームホネスト」だ。
チームホネストの一人、ダノンジャパン購買部原材料担当バイヤーの佐々木里江子さんは「これまで使用してきた添加物の安全性は確保されている。添加物を不使用にすることで、コストもかかる。だが、透明性をもって『包み隠さない』方針で、消費者が『望まないもの』を使用することを止めた」と説明する。
着色料を使わないことで、色が悪くなることがある。例えば、イチゴを使った製品の場合、自然な変化で茶色くなりやすい。人工甘味料と砂糖では味の違いもある。
「人工甘味料はすぐに甘さを感じやすく、量も少なくてすむ。健康的な量の砂糖で、自然な甘さを出すためのレシピづくりに苦心した」と、研究開発部シニア・マネジャーの土肥愛香さんは語る。
ダノンジャパンはウェブサイトや商品を通じて消費者に対し情報発信を行っていくという。松田副社長は「欧州発の企業として、『アニマルウェルフェア(動物福祉)』といった価値観などを日本に伝えていける。プラスチックの容器も良くない。どう変えていけるか、一歩一歩進めていきたい」と意気込んだ。