「マーケット」は共感しているか
――社会課題解決時代のビジネス・アプローチ
NBAでの経験を頼っていただいてか、B LEAGUE Hope 効果なのか、最近スポーツ界幹部からの問い合わせが増えてきた。
・プロスポーツチームの地域での存在意義を高めたい
・SDGs(持続可能な開発目標)を取り入れたい
・貧困をテーマにしたい
そのためにどうしたらよいか、という質問だが、私は毎回こう切り返す。
「まずはマーケットに聞いてください」
この経験から私が学んだことは、日本スポーツ界の方々は、事業マーケット(影響を与え得る範囲)を非常に大まかにとらえていて、「『なんとなく世の中で騒がれている』社会課題」に取り組もうとする傾向にある、ということだ。
関心の高まりは大歓迎なのだが、SSR(スポーツの社会的責任)的観点から、その曖昧なアプローチを軌道修正したい。それぞれのスポーツ、プロチームには特有のマーケットがあり、SSRはその「限定された地域社会」に対してのみ負うものだからだ。Bリーグは国内、Jリーグなら日本とアジア数か国だ。多様性の低い日本では全国展開事業なら同じという見方もあるが、Bリーグがサッカーファンに効果的にメッセージを届けることは難しいし、逆もしかり、である。
具体的に何をするかは、Bリーグのケースなどにある通り、マーケット特性が反映されているかが重要だ。LGBTを重要顧客とするWNBAを傘下に持つNBAがLGBT支援をする、ホームレス数全米トップ3の地域を本拠とするNBAチームがホームレス支援をするなどのロジックが必要ということである。
そして、活動を始める際には、ふたつの問いかけを忘れないでほしい。
1:発言力のある人だけでなく、「声なき人々(弱者)」の声も反映しているか
2:自分たちがやりたい方法ではなく、本当に受益者のためになる方法をとっているか
答えが両方YESならば、「本業を通した」活動でなくてもきっと成果につながるだろう。重要なのは、実施はNPOなどに委託してもよいが、メッセージはスポーツチームから発することだ。
ひとつご認識いただきたいのは、SSR活動は、即時効果があるわけではない、ということ。でも、やっていない場合との差は歴然と出る。その点において、SSRはマーケティングの筋トレである。
社会貢献活動を「いかにやるか」が問われる時代、より多くのチームに取り組んでいただけたらと思う。上記手法である程度はうまくいくはずだが、グローバルの視座とデザイン性を訴求されたい方は是非ご一報ください。