国際NGO創設者「ダイベストメント、日本は遅い」

 

化石燃料関連の企業から投融資や預金を引きあげる「ダイベストメント」が米国や欧州を中心に急速に広がっている。その総額は6兆ドル(約660兆円)を超えたとの試算もある。地球温暖化問題の解決のためには石油や石炭産業への投融資を断ち切り、圧力をかけることが重要として、2015年のパリ協定以降、多くのNGOが主導した。その一つ、気候変動防止の行動を訴える国際NGO「350.org」のビル・マッキベン創設者に世界の動きと戦略を聞いた。(インタビュアー:箕輪弥生)

■NY市など大都市や企業が牽引

――350.orgでは6年前からダイベストメントについての活動を行っているとお聞きしましたが、始めた頃と今とでは世界でのダイベストメントへの関心はどう変わってきているでしょうか。

ビル:最も大きく変わったのは金融機関の意識だと思います。政治の世界よりずっと早く動いています。というのも、金融業界はあまりにも大きな額がダイベストされているので、化石燃料に対する市場のとらえ方を変えざるを得ないからです。

また、金融業界というのは将来を見越し、それによってどれだけの利益を得るかという業種ですから、当然動きは早い。それに対して政治は現在に、または過去に焦点を当てています。

――ニューヨーク、パリなどの世界の大都市がダイベストメントを決定していますが、350.orgは具体的にどのようなことを行っているのでしょうか。

ビル:例えば、米ニューヨーク市は、同市が管理する年金基金1910億米ドル(約20兆円)のうち、化石燃料にまつわる株式の全額を売却しようとしています。これに加えてビル・デブラシオNY市長はエクソン・モービル、シェブロン、BP、ロイヤル・ダッチ・シェル、コノコフィリップスなどの5大石油会社に対して気候変動による被害の訴訟を起こすことを決定しました。同市はすでに、海面上昇、強大な嵐、気温上昇対策のために200億米ドル以上を費やしており、今後も気候変動によってニューヨーク市の財政的負担が増すためその補償を求めるとしています。

また今日(5月11日)入ってきたニュースですが、シアトル市も同じく石油会社に訴訟を起こすという発表がありました。サンフランシスコ市も同じことをしています。つまり、米国では、東海岸、西海岸の大きな都市が協力して化石燃料を扱う会社に大きな圧力をかけるようになってきたのです。

■自然エネルギーへの転換も

――企業についてのダイベストメントへの動きやその理由として顕著なものがあれば教えてください。

ビル:米国企業はほとんど、欧州ではほとんどすべての企業がダイベストメントや持続可能性を意識した事業運営になってきています。

特に米国ではアップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックといったIT系の会社が最も活発に動いています。これらの企業は事業運営に大きなエネルギーを使うので、事業運営やオペレーションに関わるエネルギーを自然エネで賄おうという動きがあり、大規模な自然エネ事業を進める企業もあります。

このような変化を起こした理由はいろいろありますが、ひとつ重要な点として人材確保があげられます。つまり、環境に配慮していていない企業だと分かると、若い世代の優れた人材が確保できなくなってきているのです。

――米国ではトランプ大統領がパリ協定からの脱退を表明していますが、米国内でのダイベストメントにも影響はありますか。

ビル:今、ワシントンDCではトランプ大統領が政権をとっているので大きな変化を起こすのは難しいです。しかし、ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市は力をもっていますし、先程話したように先進的な考え方をしています。

そこには変化を起こそうという知識人が住んでいます。つまり、米国では連邦政府に依存しない形で動きをつくろうというムーブメントが明確になってきていると言えます。

■お金の流れを断ち、温暖化の抑止力に

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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