パキスタンでトランスジェンダーを対象とした学校が4月に開校した。社会的・経済的に不利な立場に置かれたこれらの人々を教育面から支える。初等から高等教育までを行い、自立と社会的地位の向上を図る。パキスタンは国民の96%以上がイスラム教徒というイスラム国家。経典『コーラン』はすべての人間の平等を説いているが、実社会ではトランスジェンダーへの差別が目立つ。開校が、市民の性差別緩和をもたらすことも期待される。(クローディアー真理)
パキスタン初のトランスジェンダー専用の学校「ジェンダー・ガーディアン」は同国北部に位置するラホールに開校した。国内のトランスジェンダー人口は少なくとも1万人とされる一方で、運動家はラホールだけで3万人いるという。
ジェンダー・ガーディアンズの高等教育部門の職業訓練コースには、募集人員以上の約40人が入学した。4月中旬から服飾デザイン、調理、グラフィックデザインを含む8分野にわたるコースで勉強を開始している。
パキスタンでは、「第三の性」を持つトランスジェンダーは伝統的に神秘的な力を持つとされ、宗教儀礼に携わってきた。法上での権利の保障は進み、最近では、ニュースキャスターにトランスジェンダーが起用されるなど、表向きには理解が進んでいるように見える。しかし、実社会は違う。実際は家族に拒否され、社会でも虐待を受けている。学校に行けないため、仕事に就けず、売春に走る事例も多い。
ジェンダー・ガーディアンを創設したのは、国内NGO団体、エクスプローリング・フューチャー・ファウンデーション(EFF)だ。アシフ・シェザード理事長は、「トランスジェンダーでも一般人同様に教育を受ければ、安定した生活を送れることを本人たちに知ってほしい。同時に、市民には差別意識を捨て、トランスジェンダーを受け入れてほしい」と語る。EFFは近日中に、首都イスラマバードや、カラチにも同様の学校を開校する計画だ。