パリ市が、水道水にガスを注入した炭酸水の無料飲水機を増やしている。2010年に第一号を設置し、今年6月には10カ所目をつくった。PETボトル入りのミネラルウォーターの代わりに水道水を飲んでもらうことで、プラスチックゴミを減らすのが目的だ。無料飲水機は以前からパリに多いが、炭酸入りは初めてでフランスでも初の試み。市民は「市販の炭酸水を買わずに済む」と好評だ。パリ市は2020年までに20か所に増やす計画だ。(パリ=羽生のり子)
パリには市民がいつでも飲料水を飲める「飲水機」がある。これまでの飲水機から出るはすべて普通の水道水だった。炭酸水の愛好者に朗報なのが、2010年から設置が始まった炭酸水飲水機だ。公共の場所に炭酸水の飲水機を設置する動きはミラノで始まり、フランスではパリ市が初めて導入した。
フランスの自治体には、「市民参加予算」というシステムがある。市で実行してほしい計画を毎年市民が提案し、リストを見て市民が投票する。投票数が多かったものが実行に移される仕組みだ。2015年、「無料飲水機を40カ所増設し、そのうちの何カ所かは炭酸水にする」案が9571票を得票し、予算を獲得した。
パリ市は2010年の一号機以来、2015年の投票までに5機の炭酸水飲水機を設置した。その後3年で4機増えたので、「市民参加予算」のおかげで設置速度がはやくなったといえる。パリ市は2020年までに全20区の各区に炭酸水飲水機があるよう増設する計画だ。
パリ2区のカフェが並ぶ繁華街の道路わきに、炭酸水だけの飲水機がある。ペットボトル4本を持ってきた近所に住む男性は、「隣人に教えられて初めて来た。これでペリエを買わなくてすむよ」と満足げだった。
飲んでみると炭酸が薄めで飲みやすい。通常水なら家の水道で間に合うが、炭酸水はわざわざ給水に来る価値がある。
12区の公園内にある一号機は小屋のように目立つ作りで、普通の水か炭酸水かを選ぶことができる。真夏日の週末、ジョギングのグループや常連の住民がひっきりなしに給水に来ていた。
公園入口でパリの水のパンフレットと紙コップを配っていたパリ市職員のファニー・コップさんは「春夏の土日に飲水機の近くで宣伝している。パリの水の良さを知ってほしい」と話した。パンフレットには「パリ市の水は包装なしで家庭に届けられます。水道水を飲むことは、一世帯が出す年間7キロの水の包材ゴミを削減することになります!」とある。
職場などの飲水機に併置されるプラスチックコップにも言及し、「フランスでは毎秒150個のプラスチックコップがゴミになっています。水筒、水差し、コップを持ってきてください」と訴えている。
フランスは世界一のボトル入り水の生産国で、毎秒190本を販売しているが、PETを含むすべてのプラスチックボトル(洗剤容器など)のリサイクル率は6割にすぎない。