国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは8月27日、海の環境保全に賛同するアーティスト7人が合作した短編ムービー『混獲 -Bycatch-』を発表した。夜の海辺で舞うダンサーたちのドレスは、アップリサイクルを得意とするコスチュームデザイナーのタニクミコ氏が、海中から回収した漁網などで仕立てた。タニ氏は演出も担当し、加害者が被害者に転じる1分間のストーリーに思いを込めたという。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)
漁業で目的以外の動物が漁網や釣り針にかかる「混獲(こんかく)」は、私たちの食卓の背後にある課題でありながら、あまり知られていない。
グリーンピースによると、世界で混獲の犠牲になるウミガメは年間20〜30万匹、イルカやクジラなど哺乳類は30万頭。海鳥は16万羽以上が命を落としている。今回は、より広い層に問題を伝えるため、「アートに昇華した形で」提示することにした。
混獲を直接防ぐ行為は漁業者にしかできないが、同NGOは消費者意識の波及効果に期待をかける。過去の英国でのキャンペーンでは、ウミガメ混獲に関与しないツナ缶を求める運動が起き、対策が不十分だった漁業由来の商品が淘汰されて店頭から消えていった。
日本で祖父母の「モッタイナイ精神」を見て育ち、英国に移住したタニ氏は、2007年に新聞各紙が一斉にフリーペーパー化したロンドンで、紙くずが道にあふれる光景を見て、新聞紙を使ったコレクションを着想した。2年前の帰国時には「エコ検定」に合格。現在もロンドンで、リサイクルをテーマにデザイン活動を続けている。
最近カルチャー界でもサステナブル意識が高まり、ペットボトルや包装紙を活用するタニ氏は、エシカルファッションショーや自然エネルギーのイベントなどに呼ばれる機会が増えている。
今回の映像プロジェクトにも、環境に関するクリエイティブチーム「NEWW」を立ち上げた大月壮氏をはじめ、平井有太、前島祐樹、田中秀典の各氏など国内外で活躍する7人のアーティストが協力した。
撮影は、7月末に九十九里浜で実施。装飾用に使った大量の漁網も、イノシシ除けの網にするなど捨てずに再利用したという。