共同通信論説委員・井田徹治「人と魚の明日のために」
今年は二回あった夏の土用の丑の日。
相変わらずメディアや街角、インターネット上にはパック詰めやファーストフードなどお手軽なウナギ製品の宣伝があふれ、スーパーや牛丼店の店頭に大量の加工品ウナギが並んだ。
賞味期限切れで廃棄された製品もかなりあったはずだ。最近ではふるさと納税の返礼品としてもパック詰めウナギは人気で、生産量の10%近くを占めるまでになったともいわれている。
絶滅危惧種とされたニホンウナギや米国から日本にも輸入されているアメリカウナギを含め、世界のウナギの国際取引が資源に与える状況がワシントン条約の場で議論になっていることも、稚魚のシラスウナギの採捕量が前の漁期に比べて4割近く減り、過去最低レベルにまで落ち込んだことも、丑の日を中心とする日本の大量販売、大量消費には、ほとんど何の影響も与えなかったようだ。
そして、もう一つ変わらなかったことがある。それは国内のシラスウナギの半分近くが、未報告か密漁の結果の「出所不明」のものであること、日本の養殖池に入れられたシラスウナギの4割近くを占める輸入品のすべてが「香港産」で、台湾などからの密輸が疑われるものだったという状況だ。
共同通信がシラスウナギの知事による許可漁業が存在する24都府県に聞き取り調査した結果では、今年の国内のシラスウナギの報告採捕量は、総計で前期より約37%少ない5.3トンにとどまった。
ところが、水産庁によると同時期に日本の養殖池に入れられたシラスウナギは全国で14.2トン。うち国内採捕分は8.9トンとされており、報告された漁獲量より3.6トンも多かった。
つまり、国内採捕分の約40%は、無報告のシラスウナギだったということになる。
貿易統計によると、昨年11月から今年4月までに輸入されたシラスウナギ約5.2トンの全てが、シラスウナギ漁の実績がない香港からだった。