英大手小売業セインズベリーは、1994年からフェアトレードの取り組みを始め、小売業としては国際フェアトレード認証製品取扱い世界最大規模を誇る。その売上高は3億ポンド(約435億円)以上に上っている(2017年度実績)。

そのセインズベリーが昨年、自社プライベートブランドの紅茶商品からフェアトレード認証ラベルを外し、「FairlyTraded(フェアに取引されたもの)」と名付けた自社独自のパイロットプログラムに切り替えたことが英国内で波紋を呼んでいる、と本誌第50号で紹介した。
認証制度に頼らないことで、第三者の目が入らなくなり、途上国の生産者・労働者に本当にフェアな価格が支払われるのかといった客観性への懸念から、英国の消費者が署名運動まで起こすほど敏感に反応した。
本来フェアトレードでは、取引によって途上国の生産者組織に直接保証される「プレミアム(人・組織・地域社会への投資・生産物の品質改善などに活用する資金)」は、生産者組織に使途決定の権限が与えられているのだが、同社の独自プログラムでは、セインズベリー財団が管理し、生産者はプレミアムの使途について英国にある財団まで申請を出し、許可されないと受領できないとしたのだ。
エンパワメントの視点が欠けているどころか、生産者の権利や尊厳を無視し、彼らを管理の対象と見なす植民地時代に逆戻りだといった批判まで巻き起こった。
その後の動きが気になり、ウォッチしていたところ、さすが市民社会が成熟していてフェアトレードが世界で最も浸透している英国だけあって、社会の監視の目が機能していることが見て取れる。
日本の消費者は見破れるか
まず今年3月、このセインズベリー独自プログラムによる紅茶商品が、あたかも認証を受けたフェアトレード商品であるかのように消費者をミスリードしている、という訴えが英国広告基準局(ASA)に寄せられた。
フェアトレード認証ラベルの認知率が90%に達する英国の消費者だが、認証を受けていない「自称フェアトレード的な商品」が存在し得ることまで認識している消費者は限られているとし、ASAは、訴えの一部を認め、セインズベリーに対し、当該商品が認証を受けていないことを明確に表示するよう、一部広告の取り下げと改善命令を下している。
(中島佳織=特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長)