WWF、グリーンピース、オックスファムの国際環境NGO3団体は共同で、国連・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書に沿った具体策を政財界に提言した。「気候変動に合わせた政府予算にする」「パリ協定に従った決断をする」など、政府対応の必要性を強調し、「金がかかる」という口実で行動しないのはもう通用しないと強調した。(パリ=羽生のり子)
10月8日、パリで開かれた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のビデオ記者会見の後、国際NGOの仏支部事務局長と、影響力のある国内の環境NGOの責任者が具体策について発言した。
仏WWFのパスカル・カンファン事務局長は、オランド政権の元開発担当大臣で、その前はオルタナティブ経済の記者だった。
カンファン事務局長は「ここ15年間、欧州のグリーン経済の成長率は他の分野の7倍だった。もっとスムーズに発展するようになれば、50万人の雇用が確保できる。今夏、経済成長が鈍った主因は原油価格が上がったからだ。化石燃料に頼らないグリーン経済にすれば、気候変動による危機から皆を守ることができ、経済が賢明な方法で成長できる」と指摘。
続けて「政府は国の負債を減らすことに力を注いでいるが、エコロジーの負債を減らすことにも同様の努力をするべきだ。今でも温暖化対策には『努力が必要』『金がかかる』と言う人がいる。20年前と違って今は解決策があるのだから、その言い分は通用しない」と断言した。
加えて「政府予算もEU予算もパリ協定に合ったものであるべき。そうなれば、ドミノ効果で交通や住宅の気候変動対策に予算が回る」と、政治とパリ協定の整合性を強調した。
セシル・デュフロ・仏オックスファム事務局長は、オランド政権の元住宅大臣で、「ヨーロッパ・エコロジー=緑の党」の元党首。「15年ほど前から温暖化対策をすれば経済が打撃を受ける、と言われて、皆がその論理にどっぷりつかってきた。しかし、もう昔の考えから脱却すべきだ」と話した。予算は「炭素税や国際金融取引税で得た金額をすべて温暖化対策に回せば可能」と述べた。
ジャン=フランソワ・ジュリアール仏グリーンピース事務局長は「報告書が政界に電気ショックを与えることを望む」と言い、ドイツ南西部の炭鉱開発計画が市民の反対運動で中止になった例を挙げ、「市民の活動は効果がある。政府や企業がエネルギー政策で後戻りしないよう市民が監視し、運動し続けることが大切」と説いた。
他の国内NGOの会長からは、「エコロジーを政策の基盤に据えるべき」という意見も出た。仏NGOの提言は日本にも当てはまる。政財界は、将来起きる可能性が高い破壊的事象にもっと危機感を持つ必要があるだろう。