ゼロから学ぶソーシャル・インパクト--実践用のガイドラインリリース
2018年11月1日、社会的インパクト評価イニシアチブ(SIMI)により、「社会的インパクト・マネジメント」のガイドラインがリリースされた。これはソーシャル・インパクト(社会的インパクト)を高めるための具体的な実践要領という位置づけだ。今回はこのタイミングで、ガイドラインの一部をハイライトしつつ、これから出てきそうな質問に答えるQ&A形式でみていきたい。(CSOネットワーク インパクト・マネメント・ラボ=千葉直紀)
社会的課題に向き合う事業を推進するにあたり、次のようなことが頭をよぎることはないだろうか。
・果たしてこの事業は本質的な課題解決につながっているだろうか。
・ソーシャル・インパクトを生み出しているのだろうか。
・それはどうやって確かめるのか。
・もっとよいやり方はないだろうか。
これらの問いに答えようとするのが、「社会的インパクト・マネジメント」である。
まずは基本的な用語の定義を確認しておきたい。
■社会的インパクト(ソーシャル・インパクト):短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカムのこと
■社会的インパクト・マネジメント:事業運営により得られた事業の社会的な効果や価値に関する情報にもとづいた事業改善や意思決定を行い、社会的インパクトの向上を志向するマネジメントのこと
次に、前提として、「社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン」が、「社会的インパクト志向原則」、「社会的インパクト・マネジメント・フレームワーク」とあわせた3点セットで成り立っていることを確認しておきたい。これらは、社会的インパクト・マネジメントを実践する上での3層構造のガイダンス文書であり、相互参照しながら活用されるものである。これらについては、巻末にURLを掲載している。
実践のための3点セットの他に役に立つ手法として、例えば「PCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)」、「プログラム評価」と呼ばれる手法などがある。両者とも聞き慣れない言葉かもしれないが、前者は、開発援助の分野で発達したもので「開発援助プロジェクトの計画立案・実施・評価という一連のサイクル」である。後者は、評価学の中で体系化されており、「社会調査の方法を活用し、社会的介入プログラムの有効性を体系的に調査し、評価を行うもの」とされている。今回は概要の紹介のみに留めるが、社会的インパクト・マネジメントにも関連する内容なので、興味ある方は詳しく調べられるとよいだろう。
上記を押さえた上で、「社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン」を読み解くポイントを押さえてみたい。