フェアトレードの活動を繰り広げている人は数々いるが、山本真希さんの活動の話を聞いた時には、フェアトレードの通常の意味合いとは少し異なる世界観を感じた。パレスチナに出かけて行って、現地の刺繍職人に着物の帯の刺繍を依頼するという活動─。そこには、いくつもの「貢献」「エシカル」の意味合いが層を成している。(生駒芳子)
まずは、パレスチナの女性刺繍職人の経済自立を支援するという意味合い。これは、途上国の人々の経済自立を支援するフェアトレードの本来の意義としっかり重なる。
第二に、伝統的な刺繍職人の世界を未来に繋げるという、クラフツマンシップ支援の意味合い。世界各国で、大量生産のファストな波に押されて、伝統工芸世界は、衰退の一途をたどっているが、パレスチナの刺繍職人も例外ではない。その刺繍職人たちに、新しい提案をし、現代に接続する物作りへと導くという活動は、国境を超えて、意義深いものがある。