学会「企業と社会フォーラム」(JFBS)は2018年9月6~7日、「企業と社会の戦略的コミュニケーション」を統一テーマとする第8回年次大会を、日本広報学会との共催のもと早稲田大学で開催しました。今回は、大会2日目に行われたBreakout Session Organized 2「消費者とのコミュニケーション」での報告・議論内容をご紹介します。(JFBS=笹森友香)
■はじめに:「消費者とのコミュニケーション」
司会の西尾チヅル教授(筑波大学)より、登壇者である笹谷秀光氏(株式会社伊藤園顧問)、高堰博英氏(三井物産経営企画部事業室次長)、間宮孝治氏(電通新!ソーシャル・デザイン・エンジン事務局長/ライター/プランナー)の紹介があり、本セッションではステイクホルダー向けコミュニケーションの中でも特に「消費者向けの在り方」にはどのような特徴、難しさ、課題があるのか、そもそもコミュニケーションの効果や成果をどのようにして捉えたらよいのか、との問題提起がなされ、各登壇者による報告が行われました。
■登壇者1:笹谷秀光氏
社会的課題への取り組みと経済活動をどのように同時実現させるか、どう社会に見せるか、共有価値をどのように創造し、競争優位を築きながら社会的課題を解決する企業の姿を、消費者にどのように訴えていくかという問いが示されました。
株式会社クボタのスローガン「壁がある。だから、行く」や、ユネスコ世界文化遺産・岐阜県白川村の「結」の精神、株式会社伊藤園の持続可能な展開を表す「茶畑から茶殻まで」を事例として紹介しながら、現代社会は経済だけではなく、環境・社会・ガバナンス(E・S・G)のトリプルボトムラインで語られる中、日本企業は「三方よし」の近江商人の精神を持ちつつも、発信性に脆弱さがあるとの指摘がなされました。
日本人には古くから徳や善を隠す「陰徳善事」があるが、今必要とされるのは「発信」であり、「発信型三方よし」を消費者に響かせるためにどうすべきか、との問題提起がなされました。
また同氏は、SDGsが世界の共通言語となる今、国際的なイベントでもSDGs準拠による運営ルールやサステナビリティに関する考え方が組み込まれているように、2020年のオリンピック、2025年の大阪万博の開催地である日本においては、SDGs目標到達の2030年に向けて今何ができるか、これからどうすべきかを社会全体で考える絶好のタイミングであると指摘しました。
SDGsの17項目について、国連広報センターが公開する「5つのP」― People, Prosperity, Planet, Peace, Partnershipを用いて構造分析し、さらにCorporate Social Responsibility (CSR)のResponsibilityを「Response」プラス「Ability」=「反応する能力」と言い換えて、企業が社会対応力をつければ、経済的価値と社会的価値の同時実現が可能だとの考えを示しました。
社会的価値とは何かを示す際にもSDGsは共通言語として使用可能であり、さらに17項目に紐づく169のターゲットを用いて自社の取り組みを徹底分析することで、企業は新たなチャンスとリスク回避を同時に行うことが可能であると説明しました。
特にSDGsの「12. つくる責任・つかう責任」について、今日のサステナブル・コンサンプションは、消費者が自身のライフスタイルを変えて持続可能な社会に繋がるモノを選ぶ行動を意味しており、モノ選びに非常にセンシティブで賢い日本の消費者に対して、企業は上手に情報提供し、かつ情報の格差を是正していくことの必要性を述べました。
SDGsは協働のプラットフォームであり新たな価値創造のツールであるため、消費者が自ら学び理解する力と企業側が発信する力、その双方向のコミュニケーションによって企業価値を上げ、社会的課題の解決を消費者とともに行うことが重要だとの見解を示しました。
■登壇者2:高堰博英氏