宮城県主催による、みやぎ地域復興ミーティング「復興後の地域社会における伴走型・発展的評価の可能性」が2月23日、仙台駅前で開催された。今や地域づくりは、行政だけでなくみんなで行う時代。復興の過程でみられた伴走支援の動きを振り返りながら、その中で役に立つ「発展的評価」を具体的にどう使うかを考えるシンポジウムであった。その内容を紹介したい。(CSOネットワーク インパクト・マネジメント・ラボ 千葉直紀)
地域の中の普通の人が支援者になっている
未曾有の大震災から8年。被災地の多くで住居の再建やコミュニティ形成が進んでいる。行政のサポートだけでは限界があり、地域の専門職のマンパワーも限られた中で、住民同士の助け合いや住民主体の新しいまちづくりといった動きもある。
2017年度に、宮城県内のNPOを中心として「被災地における福祉系・地域系支援員調査事業」が行われた。被災地ではリーダー的人材が不足する中で、普通の市民が支援員となり被災者の生活支援やコミュニティの再生に向けた活動をしている。このような支援員が“当事者性を持ちながらも客観的に支援する”ことを大切にしながら活動していく中から、専門家では見出せない支援の視点(=市民的専門性)を獲得していく様子が調査の中から明らかになった。
この調査結果を踏まえて企画された本シンポジウムでは、はじめに2つの支援の事例の報告があった。
事例報告のひとつ目は、神戸まちづくり研究所 山元復興ステーション・橋本大樹氏。山元町と地域の人たちの橋渡し役を担う「自治会支援の事例」であった。山元町は沿岸部の津波被害が大きく、内陸部に集約された集団移転団地が3ヶ所整備された。これらの新しい団地の自治会づくりに向けた支援を山元復興ステーションは担ってきた。
その支援内容は幅広く、はじめは会議の資料づくりといった事務的な代行や会議のファシリテーションなどもおこなっていたそうだが、その後時間の経過とともに徐々に自治会が力をつけ、自立する方向で進んでいるという報告であった。
事例報告のふたつ目は、美里町社会福祉協議会の地域福祉課長の浅野恵美氏。同社協では介護保険事業は行わず、地域福祉活動の支援を専門に行っている。その支援活動の中で接した、住民Aさんへの個別支援の詳細な話があった。
地域には第2、3、4のAさんがいるため、Aさんの個別課題を地域課題として捉え直す(課題を地域化する)ことが必要である。当事者(Aさん)に向き合いながら、組織内での理解を広め、地域住民とも一緒に協議を重ねる中から生まれた「買い物支援サービス」の事例から、課題を地域化したプロセスを丁寧に報告いただいた。
支援者の力と対象事業の価値を引き出す「発展的評価」