社会イノベーションとお金の新しい関係(Vol.11)
WHOが2011年に発表したレポートの中で、2030年の世界最大の疾患は「うつ病」だと予測したことは、時代の大きな変化を印象づけた。現時点で既に3億人を超える人々がかかっているといわれるうつ病は、今後、人類を悩ませる主要な問題になってくるはずだ。様々な努力にもかかわらず、この予測は確実に実現に向かっている。
ここに興味深い数字がある。厚生労働省の調査によると日本のうつ病患者が大きく増え始めたのは1999年から2002年頃である。この頃から日本ではうつ病患者が大きく増加している。
実は前年の1998年にこんなことが起きた。日本はずっと上昇トレンドだった平均年収が減少に転じたのだ。もちろんこの二つの数字に明確な関係性は立証されていないが、日本においては、戦後一貫して所得は増加してきたのだが、減少に転じた時期とうつ病の急増が一致しているというのは興味深い。
しかし、実感としても、私たちは「お金」というもので幸せを感じたり不幸せを感じたりする傾向はある。職場で嫌なことがあったり、自己嫌悪になったりしても、収入が増加していくことが明らかなら、未来に希望を感じてうつになりにくいのかもしれない。
しかし、この低成長時代、デフレ社会で、総量として、社会の中で年収を増やすことは容易ではない。そうすると、「お金」との付き合い方や、今ある「お金」で幸せ量を増やすことが必要になってくる。