環境活動や社会企業家らへの支援、福祉などに運用先を限定する「エコ貯金」が、広がりを見せている。
特にリーマン・ショック以降、利益中心の金融に疑問を持ち、お金の流れに社会性を求める市民が増えたためだ。従来はNPOバンクや非営利の金融機関が中心だったが、変化はついに大手銀行にも及びはじめた。
「エコ貯金」という言葉を2002年に初めて提唱したのは、国際環境NGOの「A SEED JAPAN」だ。都市銀行や郵便局の預金が環境破壊や戦争、人権侵害を助長するビジネスに融資されている現実を変えるため、A SEEDでは同年から「エコ貯金プロジェクト」を展開している。
■預金先移転でエコ貯金 エコ住宅の購入支援も
エコ貯金には大きく分けて、
(1)銀行を選ぶ「預金型エコ貯金」
(2)福祉や教育、環境保全などの事業に1-2%の低利で融資する非営利の金融組織(NPOバンク)に出資をする「出資型エコ貯金」
(3)まだ案件は少ないがSRI(社会的責任投資)を利用する「投資型エコ貯金」
――の3種類がある。
これまでにA SEED JAPANのエコ貯金プロジェクトを通じて、預金先を都市銀行などから移転する「エコ貯金宣言」をした人は1600人以上に上り、宣言額は10億円を突破した。
また、宣言だけでなく実際に行動に移す人も多い。預金型エコ貯金の代表例とも言えるのが、中央労働金庫だ。
中央労働金庫では2006年から日本最大の環境イベント「アースデイ東京」に出展し、NPO支援事業などの活動を紹介している。同金庫総合企画部CSR企画の梅村敏幸次長は「ブースで口座開設希望の書類を記入した人の3人に1人は、実際に2ヶ月以内に口座を設けている」と語る。
従来は社会起業やNPO活動への融資が中心だったNPOバンクも、最近は活動のすそ野が広がりを見せる。2008年に設立したNPO天然住宅バンクは、エコ住宅の購入に対して融資を実施。国産材などの天然素材を用いた環境配慮型住宅の購入者に対して、住宅ローンの一部や省エネ家具などを対象に上限500万円、年利2%で貸し付ける。
融資に限らず、さまざまな活動を展開するのが、音楽家の小林武史氏や坂本龍一氏らが設立した「ap bank」だ。毎年夏に音楽フェス「ap bank fes」を実施し、環境問題をアピール。イベントの収益は融資に充てられる。10月30日には、日本の食と農について考えようと、千葉・木更津の農場で開墾体験イベントを企画中だ。