鶏にとって「平飼い」が良い理由

◆卵と鶏の話(前編)

2018年のWorld Atlasによると日本は世界一の卵消費国。日本人一人当たり年間約320個の卵を消費しています。それでは卵を生むめん鶏は、日本ではどのくらい飼育されているのでしょうか。

日本は世界一の卵消費国

日本のめん鶏(成鶏)飼育数は2018年では約1億3900万羽、飼育農家は2200戸でした(2018年)。30年余年さかのぼった平成1年の飼育数は、現在とあまり変わらない約1億4000万羽程度、飼育農家は9万4000戸でした。

日本の養鶏は小規模の農家層を中心に減少している一方で、 飼養羽数は増加しているのが現状です。つまり1戸あたりの飼育数が増えているということで、1戸6万3000羽が平均の飼育数です。多いところでは10万羽以上を飼育しているところもあるのです。

この影響を直接的に受けているのが、めん鶏そのものです。

現在日本の卵用の養鶏農家の9割以上が、ワイヤー製のバタリケージでめん鶏を飼育しています。

生産性を優先するので、1つのバタリケージに複数のめん鶏が詰め込みれ、1羽あたりの飼育面積はB5用紙よりも小さなスペースしか与えられていません。殺伐とした環境である上、自由に動き回ったり、羽を広げるような広さはありません。

成長しためん鶏は背丈が45㎝程度になりますが、バタリケージの高さはその背丈と同等であるため、当然ジャンプなどの垂直運動はできません。鶏には社会序列を決めるためにつつきをするのですが、ケージ飼育ではそのような習性への配慮はなく、強者と弱者が同居しています。逃げ場がない弱者が強い鶏からケージ内で暴力的なペッキング( つつき)を受け負傷、あるいは絶命することもあります。

めん鶏の先祖はインドや東南アジアに生息していた野鶏(やけい)です。それが家畜化され、改造され現在の生産優先の種なっています。改造や交雑をしても、もともと持ち合わせている習性はそう簡単に除去される要素ではありません。

卵は物価の優等生を言われるとおり、昭和時代から値段の変動は微小ですが、その裏には行動の自由や生きる喜びを奪われている動物たちがいるのです。

現在市場で私たちが購入できる卵のほとんどが、ケージ飼育で生産された卵です。

ザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパンでは、市場に影響を与える大きな食品企業、流通企業、リテール企業などに働きをかけ、平飼い以上、めん鶏が自由に動き回り、生きている間の時間は動物の福祉が保たれている飼育方法で作られた卵の調達に切り替えていただくことをお願いしています。サプライチェーンに平飼いたまごを増やし、市場にも増えるという流れを作ることが目的です。

今はまだ、平飼い卵はレア物として扱われ、値段も高めに設定されていますが、今後広く普及し手に入りやすくなると値段も下がると予想しています。これを進めるためには、消費者皆様が平飼い卵を求めるということが大きな鍵になります。

次回は海外、国内の平飼い卵に切り替えた企業など、海外の動向を含め、日本では平飼い卵がどこで手に入るかなどご説明いたします。

◆上原まほ
ザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパンのスタッフ。アメリカの大学で経営管理を学び、同国の大学院で動物擁護と法律を学ぶ。2017年のTHL Japan誕生以来、雌鶏の苦しみを限りなく減らすために、大手食品企業対し平飼い卵調達の働きかけをしている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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