■コスタリカレポート㊤:「人権と対話」を追求する平和国家
中米のコスタリカは自然エネルギーだけで電力を賄い、自然保護を徹底して進める環境立国として有名だ。同時に、紛争の多い危険な中米にありながら軍隊を持たず、平和、人権の分野でも際立った存在感を示している。先進国でもない中進国、そして紛争の多い中米地域にある小国が「世界幸福度」でトップとなるのは何故なのだろうか。前半はこの国の基本を形作る平和戦略についてレポートする。(環境ライター 箕輪弥生)
70年間軍備なしで平和を維持
「Pura Vida!」(プーラ・ヴィダ)。コスタリカの国を理解しようとする時に最も身近でわかりやすい言葉だ。誰もが挨拶の代わりにも使い、旅行者もまずこの言葉を覚える。直訳すると「純粋な人生」となるが、「おおらかに人生を楽しもう」「どんな時でも今を幸せに生きよう」という意味も含まれる。コスタリカ滞在中にも何度もこの言葉を聞き、そのたびに何故か幸せな気持ちになった。実際、さまざまな幸福度指数でコスタリカは上位に位置している。
コスタリカは今から70年前に日本に次いで平和憲法を作り、常備軍を廃止した。国家の非常事態の際には軍隊の編成権限が大統領に与えられるが、憲法制定以来一度も軍隊が組織されたことはない。
1983年には「非武装中立」を宣言した。この時期はコスタリカに隣接するニカラグアやエルサルバトルなどが内戦を行い、米国による介在があったが、当時のルイス・アルベルト・モンヘ大統領はこれを良しとせず、国際紛争を行わないだけでなく、大国からも自立した外交を行うことを宣言した。この動きを進め、中米和平合意を実現させたオスカル・アリアス・サンチェス元大統大統領は1987年に「ノーベル平和賞」を受賞している。