■コスタリカレポート㊦:世界初、カーボンニュートラル国家を目指す
中米のコスタリカは2021年までにカーボンニュートラル&プラスチックフリー国家になるという野心的な目標を掲げている。同国は、電力はほぼ自然エネルギーだけで賄い、森林を再生し、エコツーリズム発祥の地としても有名だ。軍隊を持たない平和国家としてだけでなく環境、エネルギーの面でも先進的な政策を先んじるコスタリカの今をレポートする。(環境ライター 箕輪弥生)
すべての経済の基礎は生態系にある
コスタリカを旅すると、熱帯雨林から熱帯雲霧林、そして高地まで多彩な自然の中に豊かで多彩な生態系が息づいていることに驚く。九州と四国を合わせたほどの広さの国土に地球上の生物多様性の5%を占めるほど豊かな生態系があるコスタリカは、国土の4分の1が保護区として管理されている。
しかし、これまで森林破壊の危機がなかったわけではない。1980年代には年間5万ヘクタールの森林が伐採されたという。現在、森林面積は1983年の2倍となる 52パーセントまで拡大しているが、政府はこの数字を70%に引き上げ、 2021年までにカーボンニュートラル化を実現するとしている。
このような森林保護は、1996年から森林法で定めた、森林を守るとその生態系サービスへの支払いがされるプログラム(PES)が機能している。背景には、コスタリカではすべての経済的基盤は健全な生態系からもたらされるという理解が根本にある。生態系の価値を認め、それを政策に活かすことによって森林が再生してきたのだ。
このような政策は、コスタリカの経済的基盤にも好影響を与えている。コスタリカのGDPの50%は観光で占められ、世界各国から多彩な自然を体験しようと多くの人が訪れている。