G20開幕、環境NGOら日本の気候変動対策を批判

28日に開幕したG20サミット

20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が6月28日、大阪市で開幕した。日本での開催は初めてで、貿易やデジタル経済のほか、気候変動やエネルギーなどについて議論される。G20に合わせ、環境NGOらは日本政府や日本企業による国内外での石炭火力発電所推進に対する反対運動などを行っている。(オルタナ副編集長=吉田広子)

■神戸市民、石炭火力発電所建設に反対運動

G20に合わせ、 神戸・灘浜緑地で脱石炭アクションが実施された(NoCoal Japan 提供)

G20は世界金融危機を機に2008年にスタートした。「国際経済協調の第一のフォーラム」として世界経済を成長させていくことを目的に開催されている。今回のG20は、気候変動対策やプラスチックごみ問題も大きな争点となっている。

なかでも、パリ協定を主導したフランスのマクロン大統領は、気候変動対策と生物多様性保護の重要性を強調し、G20の重要な議題として位置付けている。

一方、議長国である日本政府は、気候変動対策へのコミットを宣言した一方で、大量の温室効果ガスを排出する石炭火力発電所を国内外で推進している。

大型石炭火力発電所の建設が進む神戸では、市民有志と環境団体らが27日、日本政府に対し実効性のある気候変動対策と脱石炭を求めるアクションを行った。

神戸では、神戸製鋼が住宅密集地からわずか400mの地点に大型石炭火力発電所の建設を進めている。大気への影響が大きい石炭火力発電所を建設することに対して、住民は反対運動を行ってきたが、神戸製鋼が2018年に建設工事を強行したため、民事訴訟と行政訴訟を起こした。

石炭火力の建設・稼働差止訴訟の原告代表幹事である廣岡豊氏は「安倍首相が国際社会で気候変動対策を行うと表明する一方で、神戸をはじめ、各地で石炭火力発電所が建設されようとしている。事業者である神戸製鋼は住民の声を無視し、建設工事を強行した。世界に恥ずべき事態である」と話す。

住民グループを支援する環境団体気候ネットワークの主任研究員の山本元氏によると、「石炭火力発電所が4基になることで、神戸市の年間CO2排出量(約1,200万t)を1社で上回ることになる(約1,400万t)」という。

国際環境NGO・FoE Japanの気候変動エネルギーキャンペーナー深草亜悠美氏は「日本が輸出する石炭火力発電所が途上国で環境破壊や人権侵害などの問題を引き起こしている。特にここ数日は、G20に合わせフィリピンやインドネシア、インドなどで日本に脱石炭を求める市民アクションが相次いで行われている」と説明する。

国際環境NGO 350.org Japanは、石炭火力発電事業への支援をやめるように呼びかける国際署名を実施し、8万843人の署名を集めた。

WWF(世界自然保護基金)インターナショナルも、日本政府が国連気候変動枠組み条約事務局に提出した長期低炭素発展戦略(2050年に向けた長期戦略)に対し、「いまだに石炭火力発電を戦略に据えるその内容は、気候変動分野でリーダーシップを担うにはふさわしくない」と批判する。

■具体案ないプラ削減の枠組み

6月15、16日に軽井沢で開かれた「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」では、プラスチックごみ削減の取り組みを定期的に報告・共有する枠組み(G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組)の創設が合意された。

それに対し、グリーンピース・ジャパンのプラスチック問題担当の大舘弘昌氏は「G20エネルギー・環境相会合では、海洋プラごみ削減に向けた国際的枠組みが合意されたが、具体的な目標や罰則は盛り込まれていない」と指摘する。

「日本政府は、リサイクルなど『川下』での取り組みに重点を置き、国レベルの使い捨てプラ規制をしていない。世界が使い捨てプラスチックの禁止という、より『川上』での取り組みに向けて動き出す中、2020年のレジ袋有料化で世界を牽引することはできない。プラスチックごみ削減のため、大量生産、大量消費社会からの早急な転換が必要だ」(大舘氏)

29日の閉幕時の首脳宣言に注目が集まる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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