国連はこのほど、SDGs(持続可能な開発目標)に関する新たな報告書を発表した。同報告書では17あるすべての目標に対する進捗状況を測定している。貧困削減や幼児死亡率の引き下げ、電力の普及などでは前進が見られるとしたが、気候変動や生物多様性など、環境関連の目標達成には課題が山積していることが分かった。(オルタナS編集長=池田 真隆)
今回の年次報告書では、SDGsの目標達成に向けたこれまでの世界の取り組みの概要を紹介されている。SDGsの達成に関する最大の年次会合と呼ばれる「ハイレベル政治フォーラム」(7月9日~18日)に合わせて発表された。
主な調査結果は下記。
・国家間、国内的な不平等の拡大に注意を向けることが急務と報告。発育不良の子どものうち、4分の3は南アジアとサハラ以南アフリカに暮らしている。極度の貧困率は、農村部で都市部の3倍。若者は成人よりも失業する確率が高い。障害者年金を受給している重度障害者は、全体の4分の1。女性と女児は依然として、平等の達成を妨げる障壁に直面している。
・2018年は、記録上4番目に暖かい年になった。大気中の二酸化炭素濃度は2018年も上昇。海洋の酸性度は産業革命以前との比較で26%高くなっており、二酸化炭素排出が現在のペースで続けば、この割合は2100年までに100%から150%に上ると予測。
・極度の貧困の中で暮らす人の割合は、1990年の36%から2018年には6%へと低下したが、世界が固定化した貧困や暴力的紛争、自然災害に対する脆弱性への対応に苦心する中で、貧困削減のペースは鈍化。長く減少が続いていた全世界の飢餓は、再び増加。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は「2030年までに目標を達成するために必要な社会的、経済的変革を遂げるには、より本質的で迅速かつ野心的な対応が求められていることは、誰の目にも明らか」と断言した。
さらに、前進の遅れが目立つのは、気候変動対策や生物多様性など、環境関連の目標にも言及。「自然環境は恐ろしい速さで悪化している。海面は上昇し、海洋の酸性化は加速し、過去4年は記録が残る中で最も暖かい年となり、100万種の動植物が絶滅の危機に直面し、土地の劣化も放置されている」と述べた。