獨協医科大学の市川剛医師らの研究グループはこのほど、食品に残留したネオニコチノイド系殺虫剤が母親から胎児に移行したとする論文を学術誌PLOS ONEに発表した。研究は低体重で生まれた極低出生体重児の出生直後の尿を測定しており母乳の影響を受けていないため、胎内で移行したことが明らかになった。市川医師は「妊娠を志向したら、少なくとも授乳中くらいまでは無農薬の作物を摂取するように心がけてほしい」と助言する。(松島 香織)
ネオニコチノイドは記憶障害などを引き起こすとされる殺虫剤であり、農薬として販売・使用されている。経口摂取することでよりよく吸収され、血液脳関門(脳の血管から神経細胞へ有害な物質が移行しないように働く障壁)を通過してしまう。主に尿から排泄され残留物は減るが、体内には一定量残存すると考えられている。
研究は、2009年1月から2010年12月までに獨協医科大学病院のNICUに入院した、在胎週数23~34週の極低出生体重児 男女57人の生後48 時間以内の尿を、高感度な質量分析法(LC-ESI/MS/MS)を用いて7種のネオニコチノイドと代謝物(体内での化学変化で出来たもの)N デスメチルアセタミプリド(DMAP)について分析した。
その結果、ネオニコチノイド系殺虫剤のアセタミプリドの代謝物DMAPが、出生48時間以内の14人(24.6%)の尿から検出された。合わせて生後14日目の65人の尿についても調査したが、7人(11.9%)からDMAPが検出されたという。