社会生活上の不利や困難の原因は、個人の心身機能の制約にあるという考えを「障害の個人モデル」と言い、社会生活上の不利や困難の原因は、社会の作られ方の偏りにあるという考えを「障害の社会モデル」と言います。社会の偏りとは、社会の多数派である障害のない人にとって使いやすい社会が作られていることで、少数派である障害のある人は、様々なバリア/障壁を課せられているという考え方が「障害の社会モデル」です。今回はこの障害の社会モデルの視点から、視覚に障害のある人が街中で遭遇するバリア/障壁について、考えていきます。(公益財団法人日本ケアフィット共育機構・サービス介助士インストラクター=冨樫正義)
■実は不便な「タッチパネル式」
多数派である晴眼者(視覚に障害のない人)にとっては便利なものが、視覚に障害がある人にとって不便になっている物の例として、タッチパネルの普及があります。
駅のコインロッカーは荷物を入れたロッカーの番号をタッチパネルで入力や確認をしなければなりませんし、飲み物の自動販売機や駅等の券売機もタッチパネル式だと、どこを押せばいいか分かりません。なお、駅の券売機には数字のテンキーが付いていて、金額の数字を押すことで切符の購入ができるものもあります。
従来の鍵付きコインロッカーやボタン式の自動販売機であれば、視覚に障害のある人にとって少なくとも鍵穴の位置が分かれば、ロッカーの利用ができますし、何の飲み物が出るかは不明でも、どこを押せば飲み物が出るかは分かりました。
飛行機の国際線では、長時間のフライトを楽しめるように、タッチパネル式のモニター(in-flight entertainment system)がついていることが増えてきましたが、航空機によってはキャビンアテンダントの呼び出し機能もタッチパネル機能の中に入ったことで、視覚に障害のある人が呼び出す際、声を出して呼んだり、横に座っている人の協力を得たりする必要性が出てきました。
飲食店でも、メニューの選択や注文を各テーブルに設置してあるタッチパネルで行うお店が増えたことで、従来あった店員を呼ぶための呼び出しボタンが無くなり、同じことが起きています。
■方向の説明は時計の文字盤で