味の素はこのほど「いのちのもと~アミノ酸のひみつ」と題し、アミノ酸とSDGs(持続可能な開発目標)の関連を学ぶ教育イベントを行った。「うま味」の素でありタンパク質を組成するアミノ酸の研究を続ける同社は、食肉生産を支える飼料用アミノ酸に関しても長い事業実績を持つ。温室効果ガスの削減や耕地面積の有効活用にも深く関わる飼料用アミノ酸について、小学5年から中学2年までの子どもと保護者30組が学びを深めた。(オルタナ編集部=堀理雄)
■地球環境、食資源を守る飼料用アミノ酸
人間や動物の身体を構成するタンパク質は20種類のアミノ酸からできている。例えばヒトでは9種類のアミノ酸が体内で作ることはできず、食べ物から補う必要がある。これが「必須アミノ酸」だ。
豚や鶏などの家畜飼料には、主原料として小麦やトウモロコシなどの農作物が使われることが多い。これらの穀物中に含まれる必須アミノ酸は、すべてバランスよく含まれているわけではない。飼料を配合しても欠けてしまう必須アミノ酸が出てくる。
これを補うために単純に飼料の量を増やした場合、過剰に摂取されたアミノ酸は有効に使われず、いたずらに窒素の排泄を増やしてしまう。
「食料の有効活用の問題だけでなく、排泄物から窒素やアンモニアが温室効果ガスとして大気中に出てしまう。土壌や水質汚染の問題もある。必須アミノ酸のバランスを高めた飼料を与えることが重要だ」
味の素グローバルコーポレート本部ESGタスクフォース担当で、獣医師でもある太田史生氏はこう指摘する。
飼料の余剰タンパク質に由来する亜酸化窒素(N₂O)は、地球温暖化に与えるインパクトが二酸化炭素の300倍といわれ問題視されている。飼料中に不足する必須アミノ酸を補うことは、温室効果ガスの削減や地球温暖化防止の点でも重要だ。
またアミノ酸を添加し穀物の配合を調整することで、栄養学的に等しい飼料でありながら穀物を育てるための耕地面積を節約することが可能であり、効率的な食料生産の面でも有効だという。
参加した40代の母親は、「アミノ酸が多くのところで使用され、人間や動物に大きな力となっていることがよくわかった」と感想を述べ、改めてアミノ酸に対する知識や理解を深めることができたようだ。また小学5年生の男の子は「アミノ酸が世界中の役に立っており、それにとても興味が持てた」と、アミノ酸が世界の諸問題の解決に貢献していることに視野を広めたようだ。
味の素では、発酵バイオ技術により効率的なアミノ酸の生産開発を続けており、「リジン」「スレオニン」「トリプトファン」といった飼料用アミノ酸製品は市場シェア10~25%に上る(2018年度)。特にリジンは、同社の取扱量としてグルタミン酸ナトリウム(MSG)に次ぐ量を扱っている。
「飼料用アミノ酸事業を通じ、SDGs目標2の『飢餓をゼロに』をはじめ、気候変動対策や土壌・水質保全、健康と福祉など様々な目標に貢献していると考えている。1つの課題解決が他の目標に波及していることを踏まえ、事業を進めている」と太田氏は述べた。
■「アミノ酸を身近に感じてほしい」
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