COP21会議にも出席したフィリピンの若手環境活動家、マリネル・ウバルドさんが来日中だ。「台風ハイヤン」(2013年)をきっかけに、環境活動家になったウバルドさんは、昨年グリーンピースから「影響力がある若手活動家」の一人に選出された。気候危機問題では、スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが、FFF(フライデイズ・フォー・フューチャー)ストライキ運動を世界で展開するなど、若い世代の活躍が目立つ。(寺町幸枝)
フィリピン中部のレイテ島北東部に位置する「タクロバン」は、フィリピンの商業、観光、教育、文化、そして政治の中心地の一地域だ。2013年11月、猛威を振るった台風ヨランダ(フィリピン名)により、壊滅的な被害を受け、多くの死傷者を出した。このヨランダにより、住む家も家財道具も一切失った一人が、マリネル・ウバルドさんだ。
米国のティーン向けファッション誌「ティーンヴォーグ」の取材に答えたウバルドさんは、当時を振り返りこう語る。「海岸沿いに住んでいたので、ストームには慣れていたが、台風がこれほど暴力的だとは知らなかった」と話す。実際、台風が過ぎ去ったあと、雨の中寝る場所もなく、真水や食料もない経験をした。電気はもちろん、電話もつながらなかったため、親戚や友人たちは、ウバルドさんたちは生きていないと思ったほどだったという。
今回オルタナの取材に対し「通常の生活に戻るのは非常に大変だった」と話したウバルドさん。それでもなんとか再び学校に通い始め、勉強を再開したという。友人たちの中には、学校を辞めてしまった子も大勢いたそうだ。理由は、壊滅的な被害を目の当たりにし、この先何をしていいのかわからない状態になってしまったからだという。
ウバルドさんは、大学へ進学し、社会学を学びながら、同時に気候変動や気候正義について学び始めた。そして、「Youth Leader for Environmental Action Federation(:環境行動連盟の若手リーダーの会・通称YLEAF)」の中心メンバーとして、タクロバンの環境問題解決のために行動を開始した。
今年9月、タクロバン市長は、市の関係者に「使い捨てプラスチック禁止」を命じた。また、現在「罰金」や「懲役」といった罰則が科される法律の制定に市政府は動いている。これはウバルドさんたち活動家にとって、大きな一歩だと話す。
現在ウバルドさんたちは、他の環境活動グループとともに、市で集められる使い捨てプラスチックの「ブランドオーディット(ブランド監査)」を進めているという。この活動を通じて、大手企業に対し環境対策を求める大きな圧力をかけるのが目的だ。海岸に漂流したゴミだけでなく、市内で集められたゴミも含めて行われている監査は、忍耐が必要な作業だ。しかし、多くの市民が参加し、活動も大詰めを迎えているという。
10月2日、3日に東京で開かれたアル・ゴア元米国副大統領が開催した「クライメイト・リアリティー・トレーニング」に参加したマリネル・ウバルドさんは、現在日本に滞在し、気候危機に関する意見交換を行ったり、フィリピンの様子を伝えるための講演活動を行ったりしている。
10月14日には、大阪の大阪市中央公会堂にて講演予定だという。詳細は、アムネスティー・インターナショナルのホームページで。
◆アムネスティー・インターナショナル
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/event/2019/1014_8294.html