積水ハウスは11月15日、「気候危機を考える環境シンポジウム」とエコ・ファースト パーク見学会を開催した。基調講演を行ったWWF(世界自然保護基金)ジャパンの小西雅子専門ディレクターは「このままいけば、2100年ごろには世界の平均気温は4度程度上昇する」と話し、気候変動対策の重要性を訴えた。「IPCC1.5度特別報告書」では、「1.5度未満」に抑えるためには、2050年ごろにCO2排出量実質ゼロを目指す必要性が示されている。(オルタナ副編集長=吉田広子)
パリ協定では、世界の平均気温上昇を2度未満(できるだけ1.5度未満)に抑えることが目標として掲げられている。
だが、すでに2017年時点で約1度上昇し、2040年ごろには1.5度上昇する可能性が高い。このまま進めば、2100年ごろには4度程度上昇するという。
では、1.5度と2度では影響にどのような差があるのか。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のデータをもとにしたWWFジャパンの資料によると次の通りだ。
・熱波に見舞われる世界人口 1.5度:約14% 2度:約37%(約17億人増加)
・洪水リスクにさらされる世界人口 1.5度:2倍 2度:2.7倍
・2100年までの海面上昇 1.5度:26-77cm 2度:1.5度に比べてさらに10cm高く、影響を受ける人口は最大1000万人増加
・生物種 1.5度:昆虫の6%、植物の8%、脊椎動物の4%の種の生息域が半減 2度:昆虫の18%、植物の16%、脊椎動物の8%の種の生息域が半減
・サンゴ 1.5度:生息域70-90%減少 2度:生息域99%減少
・北極(夏場の海氷が消失する頻度) 1.5度:100年に1度 2度:少なくとも10年に1度
・海洋の年間漁獲高 1.5度:150万トン減少 2度:300万トン以上減少
「IPCC1.5度特別報告書」によると、2030年までにCO2排出量を約45%(2010年水準)削減し、2050年ごろに実質ゼロを実現できれば、気温上昇を1.5度に抑えることができるという。2度の場合は、2070年ごろに実質ゼロを目指すことになる。
小西ディレクターは、「これからのスタンダードとして、世界各国は『1.5度』を真剣に受け止めている」と話す。例えば、英国は「2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という目標を掲げ、気候変動法を改正し、法制化する予定だ。
小西ディレクターは「1.5度を目指さなければ、もはや先進的な温暖化対策とみなされない、。選ばれる企業になるために、世界のトレンドにのり、脱炭素によって日本が成長していくサイクルができることを願っている」と期待を込めた。
■なぜ企業が気候変動対策に取り組むのか