明治は1月22日、アイスクリーム製品の賞味期限を6月から順次表示すると発表した。市販のアイスで大手メーカーが賞味期限を記載するのは明治が初めて。同社は「賞味期限の表示を求める消費者ニーズに対応した」と説明しているが、この施策はフードロスを抑えるという社会ニーズに合致しておらず、時代の流れにも明らかに逆行している。(オルタナ編集長・森 摂)
同社は「明治 エッセル スーパーカップ」シリーズで今年6月から製品の裏面に、製造から最長で24カ月の賞味期限を表示する。2021年4月をめどに同社のすべての市販アイスクリーム製品で賞味期限を表示する。
同社は、今回の賞味期限表示について「いつまで食べられるのか知りたい」という消費者の声に応えたという。2019年11月に実施した消費者調査(2400人)で「アイスクリームの賞味期限の表示を希望する」とした回答が67%に達した。
同じ調査で、8割以上が「1週間以内に食べる」との回答があったため、「賞味期限を記載しても大きな食品ロスにはつながりにくいと判断した」(同社広報部堤祐介氏)。フードバンクとの連携も強化し、フードロスが増えてもフードバンクへの提供ができるように配慮した。
■SDGsで食品ロス削減の明確なターゲット
ただし、この新方針には大きな疑念を持たざるを得ない。いまの日本にとって「食品ロスの削減」は喫緊の課題だからだ。農水省や環境省によると、日本の食品ロスは643万トンに達し、この量は世界の食糧援助量(2017年、年間約380万トン)の1.7倍に相当する。
SDGs(持続可能な開発目標)でも、目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」のターゲット12.3において、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」と明記している。
日本でも昨年10月に食品ロス削減推進法が施行され、食品メーカー、流通、地方自治体、消費者らに食品ロスの取り組みを求めている。所管である消費者庁も自ら、「食べもののムダをなくそうプロジェクト」を立ち上げ、食品ロス削減協力や食べ残しゼロなどを呼び掛けている。
食品ロス削減推進法施行に先立ち、賞味期間の「3分の1」以内に卸業者が小売店に納品しなければならない「3分の1」ルールも、スーパーを中心に「2分の1」に変更する事例が増えた。
アイスクリーム類は「-18℃以下」という保存上の注意を守れば長期間保存しても品質の変化が小さいため、消費者庁の食品表示基準で賞味期限表示の省略が認められている。それを、わざわざ表示するとどうなるか。