前橋バイオマス発電所をめぐる住民訴訟の控訴審で東京高裁は3月9日、第1回口頭弁論を開き、同日結審した。この裁判は、同発電所の建設の前に群馬県が不当に基準を変更して環境影響評価(環境アセスメント)の義務付けを免れさせたとして、住民らが事業補助金4億8千万円の返還を求めたもの。判決は5月20日に言い渡されるが、即日結審だっただけに原告側に厳しい内容も予想される。(オルタナ編集部=堀理雄)
争点の一つは、環境アセスメントの対象事業を規定する基準の変更が適正かどうかだ。群馬県は新規に工場を建設する際、排出ガスの総量が毎時4万立方メートル(0℃、1気圧時換算)を超える場合には、環境アセスメントの実施を条例で義務付けている。
同発電所の排ガス量は従来の基準では毎時4万立方メートル(同)を超えていたが、群馬県は木質バイオマスを燃料とする場合、木に含まれる水分(含水率)を考慮して計算するよう基準を緩和。同発電所事業は対象外となり、環境アセスメントは実施されなかった。
前橋バイオマス発電所(最大出力6750キロワット)は、東京電力のグループ会社である関電工とトーセン(栃木県矢板市)が出資して建設し、2018年3月営業運転を開始している。
訴訟は2016年、福島第一原子力発電所の事故による放射能で汚染された森林から間伐された木材を焼却する同発電所事業に不安を感じた住民らが「赤城山の自然と環境を守る会」(代表:横川忠重)を結成し、前橋地裁に提訴した。
住民らは、環境アセスメントの未実施や放射能汚染の問題のほか、発電所の建設の際に近隣住民に対する周知・説明が不十分であった点や、稼働後の騒音被害などについても問題にしている。
2019年10月末の前橋地裁の第一審判決では、住民の主張が退けられ、住民側は控訴。5月20日の判決では、上記の争点などに関する高裁の判断が注目されている。