ヨーロッパを訪問して帰国した日本人のなかから、新型コロナウイルスの感染者が出ている。ヨーロッパでの感染状況は、非常に深刻だ。累計感染者がイタリア、スペイン、ドイツ、フランスに次いで多いスイスでも、すでに7000人以上の感染が確認され、日本の感染者数を大きく上回る。日本では、ワタミが子どもたちを対象に弁当代を無料で配布するなど、貢献する企業があらわれているが、ドイツやスイスでは、個人間の援助ネットワークが広まっている。なかでも高齢者を支援するため、無償での買い物代行が広がっている。(チューリヒ=岩澤里美)
スイスは、幼、小、中の教育施設で給食制度がなく、一旦帰宅して食事するため、目下の非常事態における全国休校でも、家庭での昼食準備の労力は普段とあまり変わらない。
在宅ワークに切り替えている人が増えているため、むしろ夫と妻の間で、買い出し(多くの商店は閉鎖。スーパー、薬局、銀行などは通常通り営業)や料理がフレキシブルにできている人もいるだろう。フード宅配サービスはピザくらいと限られている一方、感染措置で閉鎖を余儀なくされている全国のレストランでは、急きょ、特別に出前をしているところもある。
■若者が高齢者の買い物を代行
いま、とりわけ困っているのは、感染で重症になるリスクが高い65歳以上の人や基礎疾患がある人だ。若い人や健康な人もそうだが、弱い部類に入るこの人たちは、極力不要な外出を控えるようにと政府から言われている。この人たちも、最低でも買い出しに行く。薬を買いに行ったり、飼い犬の散歩をしたりといったことも必要かもしれない。
70代半ばの筆者の親戚は心臓疾患があり1人暮らしで、感染をとても恐れて家から出ない。近所に住む妹が買い出ししている。彼女も70代だが、ほとんど病気をしたことがないので、感染予防はしつつも恐れてはいない。
こういった助けを得られればよいが、そうでない人のためにと、買い出しを代行する無償ボランティアグループが、休校宣言が発表された3月13日ごろから、全国各地で形成されている。
人口約3800人の町に住む39歳の女性は、フェイスブック経由で呼びかけて、Helfende Hand Jonschwil という名のもと援助者を募った。数時間で4人集まったという。「手助けすることが好きです。現状を真剣にとらえています。すごく手助けをしたいと感じます」と話す。
■3日間で300以上のグループも