三井住友FG、脱炭素方針改定 NGOから批判続出

三井住友フィナンシャルグループ(以下SMBCグループ)は16日、環境や社会に影響を与える「ESG」に関するリスクについての方針を2年ぶりに改訂した。パリ協定による国際社会の脱炭素化の動きを踏まえ、「新設の石炭火力発電所への支援は、原則として実行しない」ことを表明した。だが、環境NGOからは、「超々臨界圧などの技術を有する案件への支援を可能としている点では、一昨年の方針改定から変化がない。実効性に懸念がある」と批判が出ている。(オルタナS編集長=池田 真隆)

SMBCグループは同日改定した方針で石炭火力発電について、「新設の石炭火力発電所への支援は、原則として実行しない」としたが、「超々臨界圧などの環境へ配慮した技術を有する案件、および改定前より支援をしている案件については、慎重に対応を検討する」とした。

この改定を受けて、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、国際環境NGO FoE Japan、国際環境NGO 350.org Japan、メコン・ウォッチ、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の6団体が共同で声明文を発表した。下記が全文。

【NGO共同声明】三井住友が石炭新方針を発表~みずほの新方針と比べて低水準に

パリ協定の長期目標を達成するためには、先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電の運転を完全に停止する必要があるため、新規の石炭火力発電所を建設する余地は残されていません。超々臨界圧以上の技術が使われる案件であっても、「改定前より支援をしている案件」であっても、パリ協定との整合性がないことは明らかです。石炭採掘や他の化石燃料関連事業についても、融資停止や残高削減の方針は示されていません。三井住友は国連責任銀行原則(PRB)に署名しており、パリ協定の目標と銀行の経営戦略の整合性をとることをコミットしていますが、今回の三井住友による石炭方針の改訂は不十分と言わざるを得ません。海外金融機関の投融資方針の水準と比べても非常に遅れをとっています。

これで日本の3メガバンクすべてが新規の石炭火力発電への融資を行わない方針を表明したことになります。しかし、この方針強化の真価が問われるのは、現在、国際協力銀行(JBIC)、三井住友を含めた3メガバンクや三井住友信託銀行が融資を検討中のベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業です。同事業については、すでに海外の銀行団(英スタンダードチャータード、シンガポールOCBC、DBS)が脱石炭方針を掲げ撤退しています。邦銀が各行の石炭方針の例外規定に甘んじることなく、このブンアン2事業から撤退するか否かが、現在の邦銀の石炭方針の、気候変動対策の観点から見た実効性を測る一つの指標となります。

なお、各行の石炭方針における例外規定の対象範囲については差異が生じています。4月15日にみずほフィナンシャルグループが例外規定を「運用開始日以前に支援意思表明済みの案件」及び「当該国のエネルギー安定供給に必要不可欠であり、かつ、温室効果ガスの削減を実現するリプレースメント案件(既存発電所の置き換え)」に限定したのに対して、三井住友は「超々臨界圧などの環境へ配慮した技術を有する案件」と幅広い例外規定を設けています(「NGO緊急共同声明:みずほFGが石炭新方針を発表~抜け穴は完全に塞ぐべき」を参照)。三菱UFJフィナンシャル・グループは今回の三井住友の方針とほぼ同水準の方針を昨年5月に表明しており、三井住友の方針強化のスピードは非常に遅々たるものであり、その厳格化の水準も他の邦銀に追い付いただけの不十分なものであると言えます。

したがって、私たちは、三井住友にさらなる方針の強化を求めます。新規石炭火力発電事業への融資については、例外規定を削除し、早急にすべてを停止する方針を掲げるとともに、石炭火力発電や石炭採掘の依存度が高い企業・新規発電所建設を計画中の企業への投融資(企業融資、株式・債券の引受及び保有)から撤退する方針を掲げるべきです。また、科学的知見及びパリ協定の目標に基づき、石炭のみならず、炭素排出量の多い他の化石燃料産業への投融資の抑制方針を掲げることが重要です。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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