京都府舞鶴市で新たな建設計画が進むパーム油発電所をめぐり、事業主体を担う予定だったカナダの再生可能エネルギー投資会社アンプ社が、このほど事業から撤退することが分かった。この計画の事業主体の撤退は同社で3社目。舞鶴市と建設事業者の日立造船は、新たな事業主体を探す方針だが、「住民のほぼ全員が反対」する地域の現状や、パーム油発電そのものの環境負荷や事業リスクの高まりのなか、計画の先行きは見通せない状況だ。(堀理雄)
■ 地域住民は騒音や安全性に懸念
計画は、舞鶴港に面する舞鶴市喜多地区に国内最大66メガワットのパーム油バイオマス発電所を新設する内容で、2022年の運転開始を目指している。事業者はアンプ社がオーナーだった「舞鶴グリーン・イニシアティブス合同会社」で、建設と運営・保守を日立造船が担う予定だ。
アンプ社が撤退に至った要因の一つは、地域住民の声だ。地元の喜多自治会が3月に行った住民アンケートでは、同地区の全戸数193戸のうち188戸が回答を寄せ、賛成はゼロ、回答保留が数戸あったほかはすべて反対意見だった。
この問題に取り組む「「舞鶴にパーム油火力発電所なんかいらん!」舞鶴西地区の環境を考える会」の森本隆代表は、2017年に京都府福知山市で稼働を開始した三恵バイオマス発電所で、騒音・悪臭被害や燃料流出事故などが起きていることを指摘した上で、「明らかに公害問題で地域住民はほぼ全員反対している。周辺は住宅地も多く、小学校の通学路の地中に高圧の送電線を埋設するなど安全性も問題だ」と話す。
喜多自治会住民アンケートでの反対理由(複数回答)は、「騒音・低周波、悪臭など」が79.3%に上ったほか、「出資者が決まっておらず責任の所在がわからない」(23.9%)、「排気ガス中の窒素酸化物」(20.2%)、「パーム油は熱帯雨林の減少や生物多様性の破壊を伴い、CO2排出量も多い」(18.6%)などが続いた。
「考える会」はアンプ社に住民の反対の意思を伝え話し合いを進めていた。その結果、アンプ社は4月22日、本案件から撤退し、今後「パーム油を燃料とする発電事業の検討は行わない」とする文書を関係者に通知した。
■熱帯林の開発圧力となる危険