コロナ騒動でこれまで指摘されながら注目されていなかった様々な社会的課題が日本でも浮き彫りになっている。地域医療体制の脆弱性だったり、貧困格差、シングルマザーの生きづらさなど枚挙にいとまがない。そんな中、コロナ禍以前から、人口減少と少子高齢化、子育て、介護、女性の働き方に注目し、インパクト投資に焦点を当ててきた、新生銀行の子会社新生企業投資の「日本インパクト投資第1号ファンド」(子育て支援ファンド)が、先見の明ありと世界から注目されているという。
これは女性の活躍を支援する民間事業者に対し投資をしているファンドで、事業者に成長の機会を提供するだけではなく、自らも経済的リターンを得ることを目指している。あわせて働く女性の子育てや介護の負担を軽減し、子供の環境を改善するのが目的だ。2017年の1号ファンドの規模は5億円だったが、2019年の第2号ファンドは一般財団法人社会変革推進財団やみずほ銀行も加わり、総額26奥円となった。
このファンドはマクロトレンドを先取りした成果であろう。コロナのおかげで関係者は改めて、インパクト投資の重要性を感じているというが、そんな中、GSG(Global Steering Group for Impact Investment)国内諮問委員会がこのほど「インパクト投資拡大に向けた提言書2019」を発行した。2015年以来5年ぶりの続編で、一般の関心をたかめるのにいい機会だ。
日本の教育のまずさもあるのだろう。日本人はお金というと何か汚いもののように感じる人が多いがそんなことはない。善意ばかりで社会をよくできるわけではない。むしろ、資金循環をうまく創り出すことが、よりよい社会づくりや変革につながることも多いのである。
提言書によると、世界のインパクト投資の市場規模は推計で5,020億ドル。毎年急速に増え続けており、日本も投資残高累計でみると2016年337億円(21件)、2017年718億円(24件)、2018年3,440億円(20件)、そして2019年が4,480億円(17件)と急増している。
市場の拡大の要因となったのは、G20での安倍総理スピーチなど政府の積極的な動きもあるが、なんといってもESG投資の飛躍的な成長が大きかった。インパクト投資の事例としては2019年は前述の新生企業投資による「日本インパクト投資第2号ファンド」設置がもっとも大きなものであった。
一方、額はそれほど大きくないが、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)も活発だ。現在、導入件数は約20件。最も先進的なのは。東京都八王子市の「がん検診受診率向上」と兵庫県神戸市の「糖尿病性腎症等重症化予防」だが、その後、大阪府豊中市のスマホ専用アプリを活用して看護師とオンラインで面談する禁煙支援「とよなか卒煙プロジェクト」のほか、規模は小さいが、地域の参加を促す滋賀県東近江市の「コミュニティビジネス起業支援」や岡山市の「健康ポイント」も注目されている。
「三方よし」の故郷、東近江市の公益財団法人東近江三方よし基金と湖南信用金庫、プラスソーシャルインベストメント株式会社が協定を結び、「森里川湖のつながりの再生と活用」「生業・企業・ものづくりを支援する」「地域の食と農を再生する」「子ども・若者の学びや仕事を支える」など地域の課題に挑む活動が対象だ。
岡山市の「おかやまケンコー大作戦」は運動、栄養・食生活、社会参加を通して健康に良い活動をする度にポイントが貯まり、それで商品券などがもらえるという取り組みである。
人口減少、少子高齢化と並ぶもうひとつの大きなマクロトレンドが技術革新の飛躍的な進歩だ。AI、ロボット、IoT、ブロックチェーンは産業構造、働き方から消費の在り方にまで大きな影響を与えている。