千葉工業大学の亀田豊准教授らは、北海道釧路市と沖縄市の水道水からマイクロプラスチックを検出した。国内で正式発表された検出例は、おそらくこれが初めてだ。マイクロプラスチックは生態系や個人にどんな影響を与えるのだろうか。(編集委員・栗岡理子)
■北海道と沖縄の水道水からPET樹脂を検出
これまで海外の水道水からのマイクロプラスチック検出報告はいくつかあったが、その精度には疑問の声も多かった。
しかし、今回発表された釧路と沖縄の水道水中のマイクロプラスチック検出結果は、自動の分析機器(顕微FTIR)による20マイクロメートル以上の調査で、精度は高い。日本の水道水中のマイクロプラスチックの存在実態が、ようやく明らかになった。
マイクロプラスチックとは、5ミリメートル以下の微小なプラスチック粒子のことだ。調査した千葉工業大学の亀田豊准教授によると、この機器を使っての水道水の調査は世界的にも珍しい。
本来ならこの結果は2020年3月に岩手大学で開催予定だった日本水環境学会の年会で、ポスター発表されるはずだった。しかし、新型コロナの影響で年会は中止。研究発表は、紙面で発表がなされたものとして扱われ、参加費を支払っていた参加予定者は学会のウェブサイトから電子版年会講演要旨集をダウンロードできることになった。
この要旨集に掲載された「水道水中のマイクロプラスチックの分析方法の確立と汚染特性調査」(平井一帆・亀田豊)によると、採取した水道水は北海道釧路市の住宅と、沖縄県那覇市内のホテル・住宅の計3カ所だ。
結果は、1立法メートル当たり60~112個のマイクロプラスチックが検出された。これまでの海外での検出例に比べ、きわめて少ない数だといえる。
3カ所に共通する主要成分はポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンで、釧路と沖縄の住宅の水道水にはポリプロピレンも多かった。原因として、水道管や取水する河川などでの汚染が考えられるという。
亀田豊准教授は現在、東京や大阪、兵庫など大都市の水道水についても調査を行っている。大都市の水道水からは、おそらく多くのマイクロプラスチックが検出される可能性がある。
■京大も2020年夏ごろまでには発表予定