気候変動や気候崩壊を放置してきたのは、いま社会で中核的な位置にいる50歳代以上の人たちだ。一方、ミレニアル世代(1980年生まれ以降)やZ世代(1995年生まれ以降)の人たちは環境問題や社会課題に対する感度が総じて高い。『地球に住めなくなる日「気候崩壊の避けられない真実」』(NHK出版)の著者デイビッド・ウォレス・ウェルズ氏もまたミレニアル世代の一人だった。(聞き手:オルタナ編集長・森 摂、編集協力:野口知世)
■ ミレニアル世代やZ世代、さらに若い世代に期待
――気候変動について、誰が問題解決の主役になるのでしょうか。私は、環境に関心をもっているミレニアル世代、Z世代ら若い世代に期待します。大人や政治家に比べて環境に対する意識が高いのもこの世代の特徴です。
私も若い世代のリーダーシップには期待しています。私も37才なのでミレニアル世代ですが、グレタ・トゥンベリさんら10代の活動家たちの活躍には目を見張るものがあります。
彼女たちはそれまでは政治的な発言権もなく、政治に参加する手立てをもたなかったにも関わらず、今や世界的な旋風を生み出しました。それぞれができることは微力で、その成果もとるに足らないと気づいた彼らは、ただ落胆するのではなく、自分たちの手で土台を築く選択をしたのです。
グレタさんが2018年8月、スウェーデンで登校拒否のストライキを開始したときは、友だちもいない、寂しい社会的弱者でした。その15才の少女が、半年くらいで何万人をも率いて、ダボス(世界経済フォーラム)や欧州議会、英国の議会に呼ばれたのです。こうした10代の活躍は、大人が何年かかっても恥ずかしいほどの結果しか出せていないことを印象付けました。
――いつか彼ら彼女らが政治の舞台に出てくるかもしれませんね。
オカシオ=コルテス米下院議員(2018年の中間選挙で当選した若手のホープ)が大統領になるかもしれません。グレタさんがスウェーデンの首相になるかもしれません。しかし、「時すでに遅し」です。つまり、若い活動家の名の元に、世代交代を待たずに進めなければなりません。
問題には両側面があります。地球を住める場所と考えるのか、住めない場所と考えるのか、気候は私たちを破滅させるのか、それとも私たちは気候変動に打ち勝てるのか。だから、私たちは両方の狭間、真ん中で気候変動に苦しみながらも新しい環境に適応し、環境の変化を最小限にとどめる努力を払いつつ進むしかありません。いずれにしても、スピードが求められます。